内容説明
中世ヨーロッパに猛威をふるった黒死病と魔女裁判。フランス革命時に地方で多発した恐慌。一八世紀後半以降の人口の急増。一六八九年、マサチューセッツ州セイラムで起こったアメリカ史上最悪の魔女裁判―こうした無関係にみえる歴史上の現象の背後には、知られざる麦角中毒症という原因があった。穀物、とくにライ麦に付着するカビの毒素(マイコトキシン)が、人間の免疫機能を損ない、中枢神経に作用してLSDと同様の効果を及ぼし、広範な集団幻覚を引き起こした。
目次
第1部 序論(食物中毒と歴史;事例研究(ロシアと近隣諸国))
第2部 ヨーロッパの健康史への寄与(遠くの鏡にうつった、あたらしい模様;近世初期ヨーロッパのマイコトキシンと健康 ほか)
第3部 植民地期ニューイングランドの健康史への寄与(咽喉不調;麦角病とセイラムの妖術事件 ほか)
第4部 見解(大衆心理の社会抑制;植物の健康と人間の健康)
著者等紹介
荒木正純[アラキマサズミ]
東京教育大学大学院博士課程(英文学専攻)中退。博士(文学)。現在、筑波大学人文・社会科学研究科教授。専門分野は、文学批評理論、イングランド・ルネサンス研究
氏家理恵[ウジイエリエ]
筑波大学大学院博士課程文芸・言語研究科英文学専攻単位取得満期退学。現在、聖学院大学人文学部助教授。専門分野は、英米文学・文化(19世紀‐現代)
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