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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nobi
80
都度書き留めたメモを並べていっているように最初は見えた。幻想譚が挟まれていたりもするので文章作法の指南書と思って読み進むと戸惑う。そもそも作法というレベルの話でない。毎日気力を高めなければ書けず、その生活を五年は続けなければ長編を完成できない。更には日々の精進で済む話でもなさそう。丹精込めた一節を時に切り捨てる勇気がいる。本を書くのはstaticに見えて、勇気と俊敏さをも要するdynamicな行為。その体験を何度も経てきた著者の言葉は覇気に満ちていて、それらを辿ることでその道なき道を幾らかは追体験できる。2020/02/02
touch.0324
52
2015年の年間ランキング入りはほぼ確実。またこの先、何度も読むであろう作品と出会った。ピュリッツァー賞授賞の著者が綴る自身の作家生活。そこには「作家にとって本(文章)を書くとはどういうことか」が精細かつ情緒豊かに記されている。《プロセスに意味はない。跡を消すがいい。道そのものは作品ではない。》と説くだけあって、全編ムダを落とした端正な文体が並ぶ。また、ふんだんに散りばめられた美しいメタファも印象的だ。文筆家だけでなく、読メで思いを込めた素敵なレビューを書くような皆さんも、本書に共感するに違いない。2015/02/06
Y2K☮
47
執筆に関する寓話風エッセイ。己の肉体を切り取って餌にして魚を釣る、潮に流されて目的地から遠く離れても、同じ向きに漕ぎ続けていればいつか流れが変わる・・・よく分かる。でもノウハウ本としては捉えない。こうすれば上手くいくなんて答えがあったら苦悩は減るが喜びも失う。著者も記している、紙は白く、何を書くかは自由だと。第七章に登場するスタントパイロット・ラームは森博嗣「スカイ・クロラ」シリーズのティーチャに似ている。飛行時の描写や農薬の空中散布操縦士の「平均寿命は五年」など同作への影響を感じる。手元に置きたい一冊。2016/11/16
miyu
28
装幀、翻訳、そしてもちろん内容も全てが素晴らしかった。ほんの120頁ほどの作品に浸りきりこれほど心打たれるとは。淡々とした自然描写を追っているはずが、いつの間にか作者の心情や思いを共有していることに気づく。読み終えた後は『本を書く』という動作が単にそれだけではなく、あらゆる営みに繋がっているのだと思えて感じ入った。ただ力強いだけではなく洗練された表現は性別さえも超えているようだ。何もかもは語らず、それでいて多くを伝えることのできる唯一無二の語り手。アニー・ディラードを知ることができた幸運に感謝しかない。2020/02/23
凛
16
私の中で切り込み隊長の名を冠されてる彼女であるが、身近な感覚でその技を見ると改めて鋭敏な知覚の持ち主だと打ちのめされる。創作活動をしている人なら非常に共感できる内容だと思う。ここまで見事に言語化してるのは凄いな。自分を掘り尽くせ、使えるものは全て使い尽くせ、出し惜しみをするな。2013/10/03