感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nina
26
ピッツバーグで過ごした著者の少女時代を回想するエッセイ。1950年代、アメリカの黄金期に上流の恵まれたリベラルな家庭で育ったディラードと私には全く接点がないにもかかわらず、どうにも押さえきれない衝動にかられ人目を憚らず全力で街を走り抜けたり、本の世界に夢中になったり、凝り性で実験と観察が大好きだったりするところはそのままわたしの子供の頃とそっくり同じで不思議な懐かしさを覚えた。何より数十年も前のことをこれほど瑞々しく繊細に、そしてしっかりと地に足のついた著者自身の力強い生き方を感じさせる筆致が素晴らしい。2015/04/20
凛
12
お風呂に片足突っ込んで熱いと感じる体験者だけの時期から、熱いと感じている自分を見つめる観察者の自分が生まれ始めた著者の子供時代の話。子供らしいが彼女らしい視点は世の中の不思議さと一回の人生では満喫しきれない素晴らしさが色鮮やかに伝わって来る。10歳の記憶をここまで仔細に描けるのは恐ろしい。親から譲り受ける無形文化資産(情報資産)の重要さ、それがどれほど思考を育むかも判る。アメリカ的文化、教会やパーティーの話は理解も想像もさっぱりできなかったのと、大人になった彼女の思考の方が好きかな。恐らくこれは共感本。2013/09/07
久美
1
幼い頃、自分の手を見つめていた時にふと、自分の手がほんとうに自分の物なのか疑わしくなった。この手を動かしている「私」と見ている「私」は本当に繋がっているのか?目の前にあり私が見ている世界は本当に他の人が見ている世界は同じなのかと、無性に恐ろしくなったことを思い出した。あれが私の目覚めだったのだ。あらゆることを深く、子どもは考えている。それをこんなにも美しく言葉にできるのか。2020/05/29
むしゃくしゃ
1
正気を失わずに、どこまで目覚めたままでいることができただろう。 すごくかっこいい。自分の世界に対して真面目すぎたのかもしれない。わたしはこんなに覚えてないし、大人になってからのことだってあんまり覚えていない。アニーの描く子ども時代はわたしにも懐かしく、子どもの頃のようにドキドキした。それで自分が子どもだったときの夢中になったことを思い出そうとするんだけど、一瞬しか覚えてない。思い出せなくて、でもきっと一生懸命に生きてた。長い時間の中で熱心に暇を潰していた。でも思い出さないんだよ。2017/08/12
belle
0
私はアメリカを知らないけれど大いに共感した。宝箱みたいなお話しだったな。今は残っていないものがたくさんあるのに、大切なものだけしっかりと残っていた。「退屈だと思ったら、海に出よう」。素直ではないけれど、愛らしくて芯のある良い言葉がたくさんあった。2023/10/21
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