内容説明
「自分の取材には圧倒的な自信」そう語る百田被告の証言は矛盾だらけだった―。当事者が描いた被差別部落像の虚と実を探る。部落出身の父親の評伝『路地の子』―自分のふるさとを描いた著者が、マジョリティに向けたメッセージとは?『マングローブ』『トラジャ』著者・西岡研介氏との対談収録。
目次
第1部 百田尚樹『殉愛』裁判の研究(“ノンフィクション”作品『殉愛』とは;著者と版元、訴えられる;百田尚樹、法廷で迷走 ほか)
第2部 上原善広『路地の子』を読む(稀に見る酷い本;同砲によるアウティング;部落民が皇族と結婚!? ほか)
第3部 西岡研介×角岡伸彦―対談 ノンフィクションにだまされるな!(肩書きは何?;地方紙での記者修行;売れればいいのか? ほか)
著者等紹介
角岡伸彦[カドオカノブヒコ]
1963年、兵庫県生まれ。関西学院大学社会学部を卒業後、神戸新聞記者などを経てフリーライター。2011年『カニは横に歩く 自立障害者たちの半世紀』(講談社)で第33回講談社ノンフィクション賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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gtn
24
新聞記者時代の経験ゆえか、誤報にシビアな著者。百田氏や上原氏が平気で嘘を書くのは「訓練不足」と切り捨てる。取材の労を惜しみ、足りない分は空想で補い、作品の量産を図った両氏。"ノンフィクション作家"というより"売文業"という方が実態に適う。2020/10/07
遊々亭おさる
21
ノンフィクション作品では異例の大ヒットを記録した『殉愛』と『路地の子』に書かれた事実とは乖離した部分を洗いだし、ノンフィクション作家が持つべき質について言及した一冊。両作品に共通しているのは圧倒的な取材不足。作者の「こうであってほしい」という願望が基本的な取材の軽視に走らせる。故意か実力不足かは別にして編集者がそれをよしとして商品として市場に流通させる姿はヘイト本や似非医学本が書店に並ぶ構図と重なるか。『路地の子』を面白く読んだ記憶がある私。本書を読まなければ偏見を持って同和問題を見続けただろうなと反省。2020/03/30
Gen Kato
6
百田某に関しては「TVのドキュメンタリー番組」(しかも質のよくないもの)を作っている感覚で、罪悪感がないのだと思う。上原氏の著作は未読だが、この題材でこの手法を使うならモデルのある「小説」として出版すればよかったのに。「ノンフィクション」も「ドキュメンタリー」も「主観」が切り取る以上、「事実」への解釈がわかれるし、憶測推測が入るのは仕方がないが、もとになる「事実」が嘘であってはならないだろう。まあ「ノンフィクション・ノベル」って矛盾きわまりない呼び方があるのもよくないのかもね…2020/03/02
せい
5
『路地の子』を読んでいたので答え合わせのような気持ちで読んでみた。こんなにも上原氏の狡猾な誤魔化しやいい加減な記述があったのかと驚いた。読者はノンフィクションと銘打たれている物ならばきちんとした取材の上編集作業を受け、ある程度裏付けのある内容だと信用してしまう。それをいいことに、売れればよいとだけ考えている出版社や編集者・ノンフィクションを書く者としての矜恃のないライターがジャンク品を堂々と世に出していることに呆れた。著者のノンフィクションの書き手としての姿勢が分かる最後の西岡氏との対談も面白く読めた。2020/02/02
ノビコ
2
随分前にテレビで殉愛の特集を見たけれど、その時に感じた胡散臭さ、やはりであったか。第二部の路地の子は読んだことがないので、エンタメ小説として読んでみよ。2025/05/10
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- 死の向こうへ