内容説明
“資本”は個々の固有の力である。そして、「資本はシニフィアン」である。経済資本だけが資本ではない。現在世界の経済・政治の根源には「性的資本」の作用がある。資本の初源的な作用である「性的資本」を、享楽/剰余享楽から問い返し、賃金や商品を欲望する現在社会の本源的な構造を明証化して労働・性別化・剰余価値を根本から問う。セクシュアリティからのセックスの離床、ジェンダーからのセックスの離床が、欲望の主体化=従体化と経済セックスの産業的ジェンダー体制を構成している。「性的資本」「エロス的資本」の諸相を明らかにして、性経済、性権力、性言説を考え直し、自己性の自分技術の可能条件を探る手がかりを見出し、さまざまな“性的なもの”をめぐる事象を本質から考えるツールが示される。マルクス=ラカンの理論からラディカルなフェミニズム理論の成果を検証。多彩な資本世界の解明がここから初まる。
目次
序として 資本主義/資本/SEXと性的資本
第1節 性的資本の四カテゴリーと、その先へ―イローズ/カプランの論述から
第2節 エロス的資本と魅力的な人のパワー―ハキムによる考察から
第3節 経済セックスと性的資本の“性”政治経済
第4節 性的差異とジェンダー―doing sex/doing gender
第5節 性的資本における享楽と剰余享楽―ラカンとマルクス
結節にかえて 性的資本と感情資本主義/感情専制主義
著者等紹介
山本哲士[ヤマモトテツジ]
1948年生まれ。文化科学高等研究院ジェネラルディレクター。一般財団法人「日本国際高等学術会議」理事長。文化資本学会および新資本経済学会顧問。教育学博士。都立大学大学院のときメキシコ・クエルナバカのイバン・イリイチの研究所CIDOCに留学。帰国後、信州大学教授、東京芸術大学客員教授をへて現在に至る。近代学問体系を超える超領域的専門研究を提唱、日本の大学アカデミズムと別個に世界レベルでの高等学術世界を形成。政治社会学、ホスピタリティ環境学、資本経済学、精神分析理論、言話理論、人類学、哲学などをもって現在社会を考察しつつ企業との協働研究ワークを多々推進。日本の文化資本、述語制言語様式の言説生産をなしながら、場所環境の資本経済設計にとりくみ、新たな学術体系を創成する。著書、編集書・誌は200冊を超える(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。