感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
阿部義彦
17
直近の古書市で購入。中央公論社の文芸誌『海』や『マリ・クレール』の編集者で、評論、書評にも定評がある、癖の強い文学者。中央公論を辞めた後に、責任編集で、文芸雑誌『リテレール』を作り、私はほぼ毎号買っていました。好きな作家でも、駄目な作品には、ハッキリと駄目だと言い切り、提灯記事には縁など一切ない人で、自分でも私は一度ガッチリとぶつからないと、本当にその人と仲良くならないと言うような、文学馬鹿でした。癌で余命1ヶ月と宣言されて、それも公表し酸素ボンベを付けても書評を続けた遺作がこの本です。私も好きでした。2025/05/18
giant_nobita
8
あらすじが長い。内容も羅列的で、小説のおもしろさを十分に伝えているとは言い難い。著者自身の感想は率直ではあるが、抽象的で中身に乏しい。他の批評家の文章を引用して事足れりとしているところも散見される。安倍公房の『砂の女』の文章を引用して「いま読むと大笑い」と書いてある箇所は、かろうじて批評になっている数少ない部分だろう。高校時代に読んで感心した『砂の女』を読み返してみたくなった。川端康成の「眠れる美女」への批判も、相手が大作家だけあって、(その当否は別として)周到に書かれている。2017/07/14