著者等紹介
志茂田景樹[シモダカゲキ]
1940年静岡県伊豆生まれ。中央大学法学部を卒業し、様々な職業を経験した後、1976年『やっとこ探偵』で第27回小説現代新人賞受賞。1980年『黄色い牙』で第83回直木賞受賞。最近はJBSフリースクール特別講師として活躍するかたわら、童話の読み聞かせボランティアを盛んに行い、その普及に取り組んでいる
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感想・レビュー
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遥かなる想い
185
第83回(1980年)直木賞。 秋田でマタギとして生きた男たちの物語である。継憲と さと、辰吉と八重…それぞれの 想いが絡み合いながら、マタギの物語は 進む。継憲の肝の座り具合が心地よく、 隔絶された 世界で生きる潔さのようなものを 醸し出している。 最後は 儚さも感じる、骨太のお話だった。2018/07/13
hnzwd
23
講談社文庫版を入手して読了。熊の小説というとほとんどがパニックホラー物になるところが、物語として読み応えのあるものになっています。時代が大きく変わろうとしていく昭和初期。マタギの里の変遷を一人の男の人生を追う形で描いています。マタギの伝統を守りたいと思う一方で、守る必要があるのかと感じる心。伝統を捨て、好きに生きている男を見て感じる怒り。もっと読まれてよい一作と感じました。2013/08/31
NORI
22
1980年直木賞。開始3ページで思わず呟いてしまった「まーたマタギかい!」。 マタギを題材にした作品は、河﨑秋子『ともぐい』、熊谷達也『邂逅の森』、西木 正明「凍れる瞳」中の一短編にもあり。直木賞作品におけるマタギ率高くない? 熊を追い込んでいく過程、獲物を換金するための取引、"時代遅れ"になりつつあるマタギ社会の葛藤、地域開発との摩擦などの題材は、もはや定番に感じてしまう。いや、上記作品群より、コチラの方がずっと昔に書かれたモノなのだけど。まさか「題材・マタギ」でお腹いっぱいになるとは思わなかった。2025/05/25
あっちゃん
22
直木賞受賞作という事ですが、あの作家さんだよね?(笑)知らなかった!さて、最初は 方言や古い言葉に手間取りましたが(何しろ訳注が無いからワカランのはワカランまま)とにかく、マタギの実生活が時代の流れとともに描かれていて、重厚でいながら、エンタメ感もある、良作でした(  ̄▽ ̄)2018/04/22
マッピー
20
主人公の佐藤継憲が、軍縮の影響で一年で兵役を終えて故郷の山に戻ってきたところから始まる。銅山や金山の採掘、山の樹木の伐採、軍の台頭と、ほぼ自給自足で生活してきたマタギの人たちが、そうは生きられなくなっていく。その中で継憲がどうやってマタギとしての矜持を保ち、減っていくマタギたちとどのように量を行っていくかを、非常に詳しく、目に見えるような描写で綴られている。それと同時に、町の娘であるさとと両想いで結婚した継憲とは別に、幼いころから継憲にライバル意識を持っていた辰吉と、継憲に思いを寄せていた八重夫婦の愛憎。2025/01/30