感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
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カントの超越論では、(物理的世界が自我を生み出すのではなく)いわば自我が世界をキャッチする。フィヒテにおいては、自我は文字通り世界を産出する。フィヒテはこのプロセスを「事行」と呼び、自我が世界(非我)や自我自身を生み出すさまを思弁的に描き出している。率直に言って、フィヒテの記述をそのまま真に受けることは困難である。しかしフィヒテによる、素朴な唯物論は自然を絶対視し、合理的なものの起源をブラックボックスのなかに置き去りにするか、別の超越論的虚構を呼び寄せることになるとの批判は、真に受けていいものだろう。2018/03/14