感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mii22.
70
【娘の本棚】雪婆んご、雪童子、雪狼、実在しないだろうそれらは東北の雪景色の中で厳しさを表す象徴であり、赤毛布(あかげっと)をきた子どもは自然の厳しさと向き合う尊い命そのもの。宇宙をもまきこむ壮大かつ荘厳な世界感を宮沢賢治はなんと美しく思いもよらないような表現で文章にするのだろうと感嘆する。五感で感じ心の隅々まで響きわたる言葉たち。真っ白な雪景色と群青の空と黄金に燃えるお日さまと小さな命の赤。実に美しく大きな感動を与えられる絵本。赤羽末吉の挿画が物語の世界をより際立たせて素晴らしい。 2020/10/11
万葉語り
50
伊吹さんの「雲を紡ぐ」に出てきた赤毛布(ゲット)はどんなものか、図書館で借りた。雪婆んごが雪童子(わらす)と雪狼(おいの)に大雪を降らせた晩に宿木を持った子供は赤毛布にくるまってうつぶせになっていることで命拾いをする。岩手の厳しい自然と優しさが伝わってくるような物語だった。2020-1002020/05/30
ちえ
39
赤羽末吉さんの絵は子どもの頃から大好きです。この本は初めて手にしました。一緒にミキハウスの黒井健さんの絵本を借りていますが、表紙の雪がぼたぼたと降っている感じといい、比べると重たい雪の吹雪という気がします。北海道に住んでいる私にとっては、こちらの方が東北の雪のイメージにより近い。色も赤羽さんらしくくすんだ色使い。大正13年出版の童話集「注文の多い料理店」に寄せた宮沢賢治の文章を最後に載せています。見開きの絵はヤドリギでしょうか。2019/03/27
♪みどりpiyopiyo♪
35
雪婆んごは遠くへでかけておりました。…ひとりの子どもが赤い毛布(ケット)にくるまって、せかせかうちの方へいそいでおりました。■賢治の生前に刊行された唯一の童話集『注文の多い料理店』に収録の9つの童話の1つです。絵は赤羽末吉。雪国の春の訪れは、水仙の咲く頃にも俄かに吹雪いて。湿った不穏な空気。雪雲に霞む陽光の煌めき。吹きつける雪片。駆け回る雪童子。■羊毛と宿り木の赤は命の徴。暗く凍てつく夜の空にも命の温もりを感じるような 様々な青が印象的な良い絵本でした。(文:大正11年 1922年。絵:1969年)(→続2018/03/20
gtn
34
雪吹き荒ぶ中、凍え、怯え、泣いたことも、それを諸天が守ってくれたことも、おそらく著者の実体験。見えないものが必ず救ってくれるから、絶望してはならない。それが著者の哲学になったのではと想像する。2023/03/23