出版社内容情報
《内容》 本書は,1999年5月29日(土)に東京において開催された第4回東京肝臓シンポジウムの講演会の記録集であります。近年の分子生物学的研究の急速な進歩によって,いろいろの癌において発癌機構に関与する多数の遺伝子が同定され,癌は癌関連遺伝子の異常によって発生する遺伝子病であることが明らかにされるに至りました。癌の発生と進展に関与する遺伝子には癌遺伝子,癌抑制遺伝子,ミスマッチ修復遺伝子などがあげられ,さらに外来性のウイルス癌遺伝子も癌遺伝子の活性化,癌抑制遺伝子の不活性化を通じて発癌に重要な役割を担っているものと推測されています。これらの癌関連遺伝子の異常が複数個多段階に蓄積して,おそらく正常細胞から良性腫瘍や前癌病変などを経て癌が発生し,さらに浸潤能や転移能をもつことにより,悪性度の高い癌へと進展していくものと考えられています。したがって,今回のシンポジウムのメインテーマである「癌化とrisk factor」は,細胞内の遺伝子異常やウイルス感染によって細胞内の増殖調節機構に破綻を来たし,細胞が癌化する仕組みを理解する上で極めて興味ある重要なトピックスであります。横崎 宏先生には,胃の前癌病変,特に腸上皮化生や慢性胃炎に注目して,テロメア・テロメラーゼと遺伝子不安定性についてご講演をいただきましたが,ヘリコバクターピロリ感染に伴う慢性の炎症によっておそらく細胞回転が非常に速くなっているためにDNA複製時にエラーを起こす確率も高くなり,また幹細胞の過形成が起こって,そのような局所ではテロメラーゼの活性化が起こって,hTRの発現が上がり,あるいはTERTの発現量が上がってくることなどが強調されました。石川冬木先生にはテロメラーゼと細胞の癌化についてご講演をいただきましたが,テロメアとゲノムの不安定化・癌の悪性化などについての新しい知見が紹介されました。湯浅保仁先生には,遺伝性の大腸癌の研究,特に遺伝性の非ポリポーシス性大腸癌(いわゆるHNPCC)に注目して,DNAミスマッチ修復遺伝子異常とTGF-βⅡ型レセプターについてご講演をいただきましたが,原因遺伝子がミスマッチ修復遺伝子であること,そしてその異常が起こった細胞ではTGF-βⅡ型レセプター遺伝子の異常が高率に起こることが明らかにされました。高田賢藏先生からEBウイルスの発癌における役割についてのご講演をいただきましたが,特に,EBウイルス関連疾患,EBウイルス関連胃癌,EBウイルス関連癌とウイルス遺伝子発現,Burkittリンパ腫とEBウイルス,EBウイルスと肝細胞癌などに注目されて,どのウイルス遺伝子が責任遺伝子の候補であるかなどを示されました。最後に小池和彦先生からは,肝炎ウイルスと肝発癌についてのご講演をいただきましたが,特にHBV のX遺伝子トランスジェニックマウスにおける肝発癌機序,さらにHCV遺伝子トランスジェニックマウスの肝発癌における細胞遺伝子の変化,脂肪化そしてコア蛋白の役割等について紹介されました。本日のご講演は,いずれも講師の先生ご自身の最先端の研究成果を交えての格調高い内容で参加された多くの皆さんに大変な感動と知的刺激を与えられ大いに裨益したものと確信しております。(序より) 《目次》 テロメア・テロメラーゼと遺伝子不安定性●広島大学医学部第一病理学教室●横崎 宏●テロメラーゼと細胞の癌化●東京工業大学大学院生命理工学研究科●石川冬木DNAミスマッチ修復遺伝子異常と TGF-βⅡ型レセプター●東京医科歯科大学医学部衛生学●湯浅保仁EBウイルスの発癌における役割●北海道大学医学部癌研究施設ウイルス部門●高田賢藏肝炎ウイルスと肝発癌●東京大学医学部感染症内科●小池和彦
内容説明
本書は、1999年5月29日(土)に東京において開催された第4回東京肝臓シンポジウムの講演会の記録集です。今回のシンポジウムのメインテーマである「癌化とrisk factor」は、細胞内の遺伝子異常やウイルス感染によって細胞内の増殖調節機構に破錠を来たし、細胞が癌化する仕組みを理解する上で極めて興味ある重要なトピックスです。
目次
テロメア・テロメラーゼと遺伝子不安定性
テロメラーゼと細胞の癌化
DNAミスマッチ修復遺伝子異常とTGF‐β2型レセプター
EBウイルスの発癌における役割
肝炎ウイルスと肝発癌