内容説明
『万川集海』は、書名のとおりすべての川が海に集まるように忍術の諸流を集大成した書物である。徳川四代将軍家綱の時代、延宝四年(1676)丙辰の歳の仲夏五月に藤林保義が著わした。藤林氏は百地・服部両氏とならぶ伊賀忍者の名家であるから、この書物は伊賀忍術の秘書だということになる。ところが伊賀とならぶ忍術の里である甲賀忍術の書だといっている。つまり甲賀では藤林保義は甲賀隠士だと主張するのである。藤林保義の住んでいた伊賀の湯舟は甲賀境に近く、伊賀忍術の主流である百地・服部両氏とくらべると確かにやや異流である。伊賀も甲賀も漢字で書けばきわめて紛らわしい。結局、本書は両方に共通の秘書だ、といってよい。『万川集海』は整然たる体系をもち、きわめて合理的科学的な側面と「正心」を強調する倫理的な側面とをもち、不断の訓練と習熟で常人のなし得ざるところを実現するテキストであって、熟読すればなかなかに面白い書物であることを御理解いただけると思う。
目次
陽忍(遠入の事;近入の事;見利の事)
見分の事
間見の事
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- 和書
- 現代社会と部落問題