感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
軍縮地球市民shinshin
17
2003年にPHP研究所から出版された同タイトルの本の改訂増補版。2003版は出てすぐ買って読了したが、一般書の割には原史料の引用も多かったが、内容はかなり衝撃的だった。「現人神」「国家神道」と喧しく政府が言うようになったのは1939年ごろからであった、というもの。つまり日中戦争⇒太平洋戦争の「総力戦」「国家総動員」という流れの中で国民を結束(これを左翼は「戦争に駆り立てる」と表現している)するために編み出したものだと指摘する。増補の第7・8章で、大正時代まで日本神話も自由に研究が行われており、規制もされ2020/07/19
南北
6
「現人神」や「国家神道」という概念は明治時代からあったと考える人が現在でも多いようですが、筆者はこの考え方を修身や国史(日本史)の教科書の変化を丹念に調べることで完全に否定しています。筆者によれば、せいぜい昭和十年代ぐらいからマルクス主義に対抗するかたちで作られたということです。その後アメリカで明治時代から存在した思想であるかのような著書が出され、それをGHQが広めるとともに昭和十年代に青春時代を過ごした人々があたかも昔からそうだったと信じ込んでしまったのが実態のようです。多くの人に読んで欲しい本です。2018/05/07
Ohe Hiroyuki
5
著者は、丹念に当時の資料を読み解きながら、天皇は神武天皇の皇孫であるとの認識はあったが、神そのものであるという思想は創られたものであると述べる▼大日本帝国憲法下では、政府は、神社は非宗教だと長らく述べており、この理解はなかなか難しいものである。本書を通してreligionの訳語としての宗教に我が国がどのように取り組んでいたことを知ることができるであろう。▼大切なことは、現代に引き直して神社がどのようにあるべきかを考えることではないかと思う。町に神社があって、お祭りがあったという風景は徐々に廃れつつある。2025/03/25
ぽん教授(非実在系)
5
丹念に資料を読み解いて、「天皇=現神人」という考え方から来る「国家神道による圧政」が昭和戦争期のごく短期間に発生したものであり、それらはソ連との対抗上共産主義から全体主義的な要素を学び取ってしまった結果であるということを立証する他、擬制にすぎなかった国家神道がどうして論として成立していたのかまで鮮やかに描き出す。 地道な作業の大切さ以外何物でもない。2014/08/03
乱読家 護る会支持!
4
「現人神」「国家神道」の概念を検証する。 教科書が国民教育の教育方針を定めるものとすれば、「現御神」が登場するのは昭和16年、「八紘一宇」は昭和18年、「神国」は昭和15年。天皇を「神の子孫」とする考え方と、「現人神」とする考え方には、明らかなギャップがある。 第一次大戦後、「総力戦思想」に染まった軍部の台頭が、彼らに浸透していた「現人神」論を広めることに繋がった。 イデオロギーとしての「国家神道」が存続してきたのは、戦中派、真宗左派、神社界、研究社のそれぞれが望んだ「共同幻想」だった。2019/06/23