内容説明
自由な言論活動が抑圧される「暗い時代」において、人々は、「孤独なる思考」のうちへ、あるいは「同情」によって身を寄せあう狭いサークルの「小さな物語」へと自閉していく。20世紀の「暗い時代」を通過したハンナ・アーレントは、「真理」よりも「対話」の可能性を愛したレッシングのなかに、新たな政治のパラダイムを発見した。それは、他者にたいして開かれた「友情」を通して、「共通世界」を継承・発展させていく政治である。
目次
1 「自己」への逃避と「運動」の自由
2 「暗い時代」の人間本性
3 「内的移住」の限界
4 「心理」と「友情」
著者等紹介
アーレント,ハンナ[アーレント,ハンナ][Arendt,Hannah]
1906‐1975。ニュースクール・フォー・ソーシャルリサーチ教授。政治思想
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感想・レビュー
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evifrei
16
公共性の空間が暗くなり世界の永続性が疑わしくなって、その結果、人間たちが自らの生活の利益と私的自由を適切に考慮に入れてくれることしか政治に求めない事が当たり前になる時代を『暗い時代』とするブレヒトの定義を正当と評価しながらも、アーレントは対話を重視したレッシングの見解に立ち、対話により世界に暖かさを呼び戻す事を提言する。形式上は全体主義の猛威を脱した現代社会でも依然『暗い時代』は継続しているのではないかとも考えられるが、対話による解決や相互理解の効用に対する評価は人により分かれる気がしないこともない。2020/04/23
クボ
0
理論より対話の可能性を探る本。2013/09/13