感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
新田新一
52
奇想に富んだ短編で知られるユアグローが、アメリカの現状を憂いて作り上げた作品集。「気をつけて」では、腕や足が簡単に抜け落ちてしまった女性たちのことが書かれています。最近のひどいニュースのことを話していたのがきっかけでした。今のアメリカ社会の悲惨な状態が書きながら、作者が表現したものは普遍的です。「ゴヤ」で作者は自分の胸中の憤懣をゴヤにぶちまけます。でも、画家は理解してくれません。ただ肩をすくめるだけです。「黒い絵」を描き続けた画家の絶望と諦観は、今の時代も続いているのが胸に落ちる短編です。2026/08/19
コニコ@共楽
13
この寓話が書かれたのが2025年4~6月。本が刊行されたのが2025年8月。そして今、2026年7月。アメリカだけでなく、世界の状況はますます"暗くなっていく”。冒頭の「松明のあかり」はナチの「水晶の夜(壊れたガラスの夜とも呼ばれる)」を想像してしまう。破壊と暴力の寓話たち。「埃」の”破壊と見世物”という言葉、「光沢」の”手枷足枷クラブ”というしろものが印象的だ。訳者あとがきで柴田氏の”いまのところ”の外国の話だという予測が“いままさに”この国でも進行中の話になっている不安と恐怖がある。2026/07/30
GO-FEET
9
《ニュースは私の脳内に掘り進み、私は喘ぎ、悶える。この新たな非道のニュースに、コルチゾールが私の体内を貫く。またしてもあらゆる残虐を組み合わせた極悪の行為。暴力と殺戮、愕然とするほかない腐敗、残忍にはらわたをえぐり出す蛮行、法の平然たる無視、噛りと卑劣ないじめ、正義と讃えられる暴行、信仰の仮面をかぶったおぞましい偏狭さ、すべての嘘と嘘と嘘と嘘。そしてまたこの新たな非道、極悪の偽善に、またしても息が詰まりそうになってくる。》(48-49頁)2026/01/10
ののまる
6
トランプ政権下の知識人たちの絶望と耐える日々を寓話で。2025/12/14
garyou
6
詩のようでもあるショートショート(超短編というのかな)集で、どの話にも息苦しさを感じるのは、匂いに関する記述が多いからかもしれない。いずれも鼻を塞ぎたくなるような、しかし塞いでも防げないような、胸の悪くなるような悪臭だ。コロナ禍のときの短編集にも逃げ場のなさのような雰囲気があったけれど、こちらは逃れようと思えば逃れられないわけでもない、でもやはり逃れられない空気を感じる。「なんでこうなってしまったんだろう」と思う時にはもう遅いのだろうな。2025/12/10




