内容説明
ある歴史学者が英雄カエサルの伝記を執筆する目的で、カエサルを担当していた元銀行家を訪ねることに。元銀行家が所有する、カエサルの秘書であった奴隷の手記を調べるためであった。やがて歴史学者は、元銀行家たちとの対話や奴隷の手記を通じて、商売という視点をまったく忘却した自分の立場の誤りを次第に思い知らされていく。古代ローマを舞台に、偉人・貴族・財界・市民・奴隷たちが、商売と政治、勝利と敗北、英雄譚と経済指標に踊る三文稗史劇。異化の作家ブレヒトが、偉人カエサルを社会的経済的視野から描いた未完の長編小説。
著者等紹介
ブレヒト,ベルトルト[ブレヒト,ベルトルト] [Brecht,Bertolt]
ドイツを代表する劇作家、演出家、詩人。1898年ドイツ・アウグスブルク生まれ。1917年にミュンヘン大学入学、1918年に第一次世界大戦に召集され野戦病院で勤務、同年に最初の戯曲『バール』を執筆。1922年にはミュンヘンで初演された『夜打つ太鼓』で脚光を浴び、1928年に代表作となる『三文オペラ』で成功をおさめる。1933年よりナチスの迫害を逃れるために北欧など各国で亡命生活をおくる。1948年に東ドイツに移り、翌年劇団ベルリーナ・アンサンブル結成、1956年に死去するまで演劇活動を続ける
岩淵達治[イワブチタツジ]
ドイツ文学者、演出家。1927年生まれ。東京大学文学部独文科卒業、学習院大学名誉教授。日本に最初に『三文オペラ』を翻案紹介した千田是也に師事し、ドイツ演劇の研究と評論で国際的に名を馳せた。ブレヒト研究の第一人者で、1999年『ブレヒト戯曲全集』の翻訳で日本翻訳文化賞、レッシング翻訳賞などを受賞。2012年に瑞宝中綬章を受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。