内容説明
髪の毛が根こそぎ抜ける感染症は、いつしか中高生以下を除くほとんど全ての人がはげる“平等”な世界に変えた。それ以前から薄毛を気にしていた真智加は新しい社会の価値観に開放感を抱いていたのだが、ある日、思いがけない新たな悩みに直面し、そのことが長年友情を培ってきたテラとの関係にも影響が及ぼしそうで…。同じく、予想外の悩みは、幼少期に髪を切られる乱暴の被害にあった高校生の琢磨にもある。それは恋人の希春と行った占い師のお告げがきっかけだった。
著者等紹介
高瀬隼子[タカセジュンコ]
1988年愛媛県生まれ。立命館大学文学部卒業。2019年「犬のかたちをしているもの」で第四三回すばる文学賞を受賞しデビュー。2022年「おいしいごはんが食べられますように」で第一六七回芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
199
高瀬 隼子、5作目です。タイトルと装幀から可愛らしい作品かと思いきや、不穏な近未来禿純文学でした。 こんな不条理な世界は厭です。 https://publishing.unext.co.jp/book/title/3IF4fiJyOREy0kN7TshQND2024/02/16
シナモン
102
謎の感染症で皆はげてしまう世界の物語。コロナ禍をビシビシと感じる物語だった。コロナ禍を題材にした物語はちらほら読んだけど、こんな風にそこからルッキズムや同調圧力にまでに膨らませたのは読んだことがなかったので斬新だった。「せっかくみんなはげたのに、生える人が出てきちゃ困るんです。そうじゃないと平等じゃない。平等じゃないとだめだ。困る、困ります…」どこまでいってもみんなと同じが大好きな日本人。面白かった。2024/01/31
ケンイチミズバ
95
自分はまだふさふさなので薄毛、はげの悩みは考えたこともない。が、後悔はある。税理士の先生で若くしてはげあがった先生がおられた。決算が終わり、例会の席で酔いが回っており、イベリコ豚の生ハムをパクつきながら20代女子の「私おじさんでも全然OK、抵抗ありませ~ん!」という声に反応し、エビとアボカドサラダをほおばりながら「え~っ!はげでも?」と口にしてしまった。テーブルが凍り付いた。この人の作品は凄すぎる。感染症で皆はげになる。そうなると潔い。はげに近づくと感染し順繰り世界ははげ一色に。子供はなぜだか感染しない。2024/01/17
やも
83
表紙可愛い。ハゲが伝染していって、ハゲが当たり前になっていく世界。ほほぅ…面白そうやん。授乳期にベジータみたいなM字ハゲになった身としては気になるやん。でもね…半分くらいまで真面目に読んだけど、最初のカツラ落ちるシーンとか面白いんだけど、その後がどーーーもハマれない。突飛な設定にワクワクもしないし、社会風刺にドキッ!とかもしない。心が動く瞬間が見つけられなかった。私の感性が鈍いってことなんかな😭後半は流し読み。2024/04/05
道楽モン
74
デビュー作から1冊毎に、価値観の崩壊する領域が恋人、夫婦、職場、地元と広がって、最新刊ではついに世間がみんなハゲになったという設定。素晴らしい(拍手)。中編ながら、高瀬イズムは健在で、ますます読みやすくなる反面、読み手のリテラシーが問われることに。コロナ禍的状況を舞台に、個人の内面が、それらをどう認識し、いかに対峙するかというテーマで、本作は二人の主要人物にそれぞれ語らせている。文学的テーマにとどまらない、世間vs.自分という普遍的な闘いを、現代日本の作家さんが形にするとこうなるという見本。見事です。2024/01/21