内容説明
戦場体験者の証言が浮かび上らせるのは、歴史的事実だけでない。話せないこともあれば、伝えたくても伝わらない真実もある。戦没した仲間への哀惜。「勇ましい」戦後右派への不信…。ビルマ戦研究者であり、戦友会、慰霊祭の世話係でもある著者が、20年以上にわたる聞き取りをとおしてつづった、“痛み”と“悼み”の記録。
目次
第1章 九八歳の「慶應ボーイ」
第2章 初年兵の「ルサンチマン」
第3章 永代神楽祭と「謎の研究者」
第4章 戦場と母ちゃん
第10章 やすくにの夏
第11章 戦友会「女子会」―元兵士と娘たち
第12章 「戦場体験」を受け継ぐということ
最終章 非当事者による「感情の歴史学」
著者等紹介
遠藤美幸[エンドウミユキ]
1963年生まれ。イギリス近代史、ビルマ戦史研究者。神田外語大学・埼玉大学兼任講師(歴史学)。不戦兵士を語り継ぐ会(旧・不戦兵士・市民の会)共同代表、日吉台地下壕保存の会運営委員、日本ミャンマー友好協会理事。2002年から元兵士の戦場体験を聴き続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たまきら
37
昨日、著者の講演に行ってきました。機内でであった方が拉孟戦に従軍した人だったことから聞き取りをするようになり、戦友会のお世話係までするようになった著者の「巻き込まれパワー」がほほえましいです。講演では友人の同僚がいたり、その場で数日前に友人の栃木さんが講演をしていたり…となんだか引き寄せパワーを感じちゃいました。彼らの声をきちんと整理することが若い世代への「学び」になると思います。2025/04/26
Nobuko Hashimoto
23
著者はJAL客室乗務員から大学へ復学、英近代労働運動史研究をしていたが、知人から資料を託されたことをきっかけにビルマ戦史の研究を始めたという「主婦研究者」(自称)。20年に渡り戦友会に「お世話役」として出入りし、元兵士らから聞き取りを重ねたことを一般向けにわかりやすい文章でまとめたのが本書。反戦活動家らからは、戦友会や靖国神社の行事への参加を咎められることも多々あるそうだが、元兵士ら自身は戦争を讃美しているわけではなく、英雄扱いされることも望んでいないことを強調している。(つづく)2024/04/19
ののまる
9
戦友会にて、ビルマ戦線の生き残りの元兵士たちの前で、あの戦争は正しかった、インパール作戦は失敗ではなかったと、蕩々と喋り続ける戦後うまれの戦争を全くしらない若者(中年か)がいることに衝撃。 著者の学会に研究者として認められなかった恨み節(主婦研究者と自称)があちこちに出てくるので、それはこの場ではいらなかったな。ともかくも今は大学の教壇に立ってるんだし。2024/05/11
アカショウビン
2
著者の河村名古屋市長発言への批判から読むに至った。世代的に近いものを感じた。(御巣鷹山、日航の゙組合の゙話に繋がっていた。)ビルマ戦線の゙話を中心に展開するが、そこで死ぬのも、生きて帰るのも、遺族もそれぞれの゙、なかなか口にできない塗炭の゙苦しみの゙中にあったことがよくわかった。「部下の゙骨を拾うことは家族の゙事より大事」と言う元大尉、「ビルマ戦で亡くなったすべての゙戦没者のための慰霊祭」をするミャンマーの゙僧侶、「死ぬ覚悟をしているのに、なぜ死ぬ覚悟でこの戦争に反対しなかったのか」と語る元特攻隊員。2024/06/23
高尾樹和
1
生きのびるブックス。戦争について、能動的に触れた経験をした。まず、過去の経験を代弁してくれた遠藤さんの活動に強く感激した。戦争で実際に命をかけたのは、兵隊であり、本人やその家族。たった4年間とはいえ、人生を捧げることになったことは事実だと当事者の言葉から感じた。想像絶する戦場で、戦地できいたハーモニカの音色が兵隊達の人間性を取り戻すことができたという内容が印象に残った。そこまで精神的に追い詰められていたのだと感じた。遠藤さんが長年の研究により、声を集めてくれて良かったと思える本でした2025/01/03