内容説明
大江健三郎の描く子供たちはなぜ、ひときわ鮮烈な印象を残すのか。“無垢”への比類なき想像力にせまるまったく新しい大江論にして、最良の“入門書”。大江文学の意外な面白さに触れる一冊。
目次
第1章 チャイルドライクな文学のために
第2章 学生作家の栄光と不安
第3章 赤んぼうの敵
第4章 一九六九年のパーコーメン
第5章 鳥は歌い、鯨は叫ぶ
第6章 逆転また逆転
第7章 反時代的ゲーム
第8章 神隠し願望
第9章 男たちよ!
第10章 「ただいま」と「お帰り」
著者等紹介
野崎歓[ノザキカン]
1959年新潟県生まれ。フランス文学者、翻訳家、エッセイスト。放送大学教養学部教授、東京大学名誉教授。2001年に『ジャン・ルノワール―越境する映画』(青土社)でサントリー学芸賞、2006年に『赤ちゃん教育』(講談社文庫)で講談社エッセイ賞、2011年に『異邦の香り―ネルヴァル「東方紀行」論』(講談社文芸文庫)で読売文学賞、2019年に『水の匂いがするようだ―井伏鱒二のほうへ』(集英社)で角川財団学芸賞受賞、2021年に小西国際交流財団日仏翻訳文学賞特別賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ジャン
4
大江健三郎の小説は読むと面白いのだが、その濃密さのあまり読み切った頃にはぐったりと疲れていて、その小説の全体像までを改めて見通すことが難しい。その点、本書は平易な言葉でありながら、大江の小説の本質を的確に拾い上げており(しかも引用の縦横無尽ぶりに驚く)、読んでいる間、大江の小説を読む高揚感を追体験する感覚になった。著者曰く、本書は大江の前半部分に焦点を当てているとのことで、確かに『燃え上がる緑の木』に言及がないのはおかしいなと思っていたので、是非取り上げていない作品についても文章を書いてほしい。2022/09/11