内容説明
「君はここまで来るために、何人の患者を死なせてきた?」大学病院で数々の難手術を成功させ、将来を嘱望されながらも、母を亡くし一人になった甥のために地域病院で働く内科医の雄町哲郎。ある日、哲郎の力量に惚れ込む大学准教授の花垣から、難しい症例が持ち込まれた。患者は82歳の老人。それは、かつて哲郎が激怒させた大学院の絶対権力者、飛良泉寅彦教授の父親だった―。「医療では、人は救えないんだよ」治せない病は山のようにあるが、癒せない哀しみはない。思想する医師・雄町哲郎は今日も京都の街をゆく―。2024年本屋大賞第四位&京都本大賞受賞の感動作。映画化決定!『スピノザの診察室』続編!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
136
第四章で秋鹿先生の言葉「先生には先生の歩き方がある。生と死が当たり前のようにつながっているこの病院に、先生は残りたいと思ってくれている。そのことをとても喜んでいる医師がいることも忘れないでください」益々マチ先生が好きになった。悲しくて、優しくて、真摯で、生きることや避けられない死に、真っ直ぐに穏やかにいられることが体中に沁みてくる読書時間だった。教授や院長、同僚医師に研修医、何より出来過ぎの甥っ子、おっと、忘れちゃいけない花垣准教授。それぞれの立ち位置が好くて、みんなみんな大好きだよ。また会いたい。2025/10/15
サンダーバード@怪しいグルメ探検隊・隊鳥
102
(2025-153)「スピノザの診察室」の続編。将来を嘱望されながらも、母を亡くし一人になった甥のために大学を辞して地域病院で働く内科医の雄町哲郎。哲学者エピクロスは快楽の本質とは、何よりも『精神の安定』のことだという。雄町は言う「人を救うのは医療ではない。人なんだ」前作も良かったけれど、今作も間違いなく良い。全ての医師に聖人君子たれと言うつもりはない。医師だって一人の人間だ。だが私はもし人生の最後に主治医をお願いするならば雄町先生にお願いしたい。今回も五つ星です。★★★★★2025/10/03
ちゃちゃ
84
読み終えて優しく温かい余韻に包まれる。有能な消化器内科医のマチ先生。医療は無力だと彼は言う。現代医療にも限界があり決して万能ではない。幼な子を残し若くして亡くなった妹の死が突きつけた冷徹な現実。医療者として傲ることなく謙虚に人の命に向き合う。治せない病気はあっても癒やせない哀しみはないという、患者やその家族に真摯に向き合う姿勢にしみじみと心打たれる。私たちはかつて看取った人やその闘病生活にふと思いを馳せる。あの時求めていたのは、身体だけではなく心の痛みにもそっと寄り添ってくれる医療者だったことに気づくのだ2025/10/16
うっちー
72
医療の奥深さをしみじみと感じました。今後の進展にますます期待します2025/10/19
もぐもぐ
67
期待通り前作に負けず劣らずな面白さ。大学病院と街中の小規模病院、それぞれの持つ役割の中で医師たちが見せる信念や矜持に惹き込まれました。雄町先生の患者へ向ける優しい眼差し、患者の残した温かな想い、花垣との熱い友情、どれも素晴らしかったですが、今回は雄町の天敵(笑)の飛良泉教授がとってもいい味出してます。彼が語る医療現場への苦言は現役医師でもある著者の思いなのでしょう。次回描かれるであろう新たな展開も待ち遠しいです。とっても良かった。2025/10/18
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