内容説明
「君はここまで来るために、何人の患者を死なせてきた?」大学病院で数々の難手術を成功させ、将来を嘱望されながらも、母を亡くし一人になった甥のために地域病院で働く内科医の雄町哲郎。ある日、哲郎の力量に惚れ込む大学准教授の花垣から、難しい症例が持ち込まれた。患者は82歳の老人。それは、かつて哲郎が激怒させた大学院の絶対権力者、飛良泉寅彦教授の父親だった―。「医療では、人は救えないんだよ」治せない病は山のようにあるが、癒せない哀しみはない。思想する医師・雄町哲郎は今日も京都の街をゆく―。2024年本屋大賞第四位&京都本大賞受賞の感動作。映画化決定!『スピノザの診察室』続編!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
299
夏川 草介は、ほとんどの作品を読んでいる作家です。スピノザの診察室の続編、今回は長編小説でした。本作も良書ですが、前作が凄く良かっただけに、今年のBEST20には推しません。第三弾もありそうなエンディングでした。 https://natsukawa-suirinsha.jp/2025/11/26
hiace9000
216
水のように、あるいは空気のようにすっと入ってきて心を震わせ響く数々の名言・至言、前作より数段アップデートされた医療界のリアリティ、そして生と死を静かに見つめ考えさせ、静かにこみ上げてくる涙―。前作から3年後の原田病院を舞台に、秋から春にかけた京都の風物や銘菓と共に織りなす医療哲学エンタメ・雄町哲郎シリーズ第2弾。正解なき医療に何らかの答えを求め、哀しみを癒して人を救い、目の前の人の笑顔を見んと京の町をゆくマチ先生。甥・龍之介、研修医・南、洛東病院准教授・花垣ら魅力溢れる登場人物らと小説を通して人生を観る。2025/11/21
青乃108号
206
マチ先生シリーズ2作目。「スピノザ~」を読んで感銘を受け、今か今かと待っていた本作なのだが、間に「神カル」を2作程読んでしまったばっかりに何だか印象が混じってしまって不安だった。しかし読み始めてみると、おそらく前作を読んでいない読者でもすんなり世界に入っていける親切設計。折々で描かれる古都京都の暮れから正月にかけての風情が何ともいえず良い。マチ先生の医師としての矜持がまた良い。その他の脇を固める医師達、患者達、それぞれが人間味豊かに描かれていて良い。心中に爽やかな風が吹き抜ける様な読後感がとても良い。2025/12/22
名古屋ケムンパス
194
流麗な文章に引き込まれ、京の都の敏腕内科医・雄町先生の言動に再び魅了されてしまいました。「神様のカルテ」では何度も患者と医師の心の交流に涙しましたが、今作では幼くして母を失った甥と、大学医局を辞してまで彼を引き取った雄町先生との互いを思い遣る夕食会でのお年玉の受け渡しに図らずも眦を濡らすことになりました。この作品でも問われるテーマは「すべての人がいずれ必ず死ぬのだとすれば、医師はなんのために患者を診るんだ?」との問い。医は仁術であることに改めて気づきます。患者に寄添う全てのお医者様に心より感謝いたします。2025/11/03
うっちー
181
医療の奥深さをしみじみと感じました。今後の進展にますます期待します2025/10/19




