内容説明
「君はここまで来るために、何人の患者を死なせてきた?」大学病院で数々の難手術を成功させ、将来を嘱望されながらも、母を亡くし一人になった甥のために地域病院で働く内科医の雄町哲郎。ある日、哲郎の力量に惚れ込む大学准教授の花垣から、難しい症例が持ち込まれた。患者は82歳の老人。それは、かつて哲郎が激怒させた大学院の絶対権力者、飛良泉寅彦教授の父親だった―。「医療では、人は救えないんだよ」治せない病は山のようにあるが、癒せない哀しみはない。思想する医師・雄町哲郎は今日も京都の街をゆく―。2024年本屋大賞第四位&京都本大賞受賞の感動作。映画化決定!『スピノザの診察室』続編!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥
81
(2025-153)「スピノザの診察室」の続編。将来を嘱望されながらも、母を亡くし一人になった甥のために大学を辞して地域病院で働く内科医の雄町哲郎。哲学者エピクロスは快楽の本質とは、何よりも『精神の安定』のことだという。雄町は言う「人を救うのは医療ではない。人なんだ」前作も良かったけれど、今作も間違いなく良い。全ての医師に聖人君子たれと言うつもりはない。医師だって一人の人間だ。だが私はもし人生の最後に主治医をお願いするならば雄町先生にお願いしたい。今回も五つ星です。★★★★★2025/10/03
shio
35
『スピノザの診察室』続編。細やかで優しい心配りに満ちた町の病院で働く哲郎。元大学病院の医局長で、医師としての能力も抜群に高いが、常に寂しさを帯びているのは、妹を亡くした哲郎自身が、医師だからこそ人を救えない医療の限界を痛切に感じているから。「医療では、人を救えない」この言葉は諦めではなく、その先を考え抜く医師としての力強さがありました。哲郎の寂しさは、甥や同僚の医師たち、さらには患者との交わりで温もっていく。折々登場する京都名物の甘味にもほっとひと息☺️生きる幸せの意味をじっくり考えさせる作品でした。2025/09/06
Atsushi Kobayashi
32
スピノザの続編ですが、一段と読ませる、登場人物の一言一言が考えさせられる人格と記載されています。 今年1番かも。 できれば映画化だけでなくって、Netflixで予算を考えずに良い役者さんを選んで、3年ぐらいかけて映像化してほしい、です。2025/10/02
Nobuko
15
「人を救うのは医療ではない。人なんだ。」この一言にはグッときた。私も神経難病で様々な病院の先生に診ていただいたが、治療法もなく、進行も止められず医療としては匙を投げられた状態。でも主治医をはじめ先生方はお忙しくても診察で、ただ「痛い」という私の訴えを真摯に受け止めてくださる。このまま何も出来なくなっていくという不安を「今を大切にしていきましょう」と。「患者第一」マチ先生の信念に通じるものを感じる。お看取りの患者さんが多かったが皆さん思い残すことなく旅立たれたのでは。次作は、南先生との進展はあるのかな?2025/09/28
RRR
14
雄町哲郎シリーズ二作目。 快楽について、幸福についてを深く考えさせられます。 二律背反する言葉なんだな、と思いました。 医療では人は救えない、救うのは人なんだ、どれだけの医者がこの真理に気付いているのだろうか? 確かに、技術があれば、救えることになるが、でも患者の気持ちに寄り添うのは、最終的には人の想いなんですよね。 人が患者に寄り添う気持ちがあれば、患者も最期は心穏やかに過ごせることだろう。 何だか、このシリーズって本当深い、とさえ思いました。2025/10/03