内容説明
ノーベル平和賞を受賞した日本被団協が結成される発端となった1954年の「ビキニ事件」以外にも、太平洋で広範に行われた核実験があった。原発事故も含めた核の問題をそれぞれの「当事者性」という視点から見つめ直した、様々な分野の研究者に加えて、市民の立場で活躍している人で作り上げた論考集。当事者視点で研究に新たな視座を拓く。
目次
第1部 いまも困難な状況にある核被災者(ビキニ事件から「忘れられた」被災者たち;核実験に伴う強制移住者たちの生活・社会・文化の変容;太平洋核実験をめぐる当事者性 キリバス共和国クリスマス島の英米核実験を中心に)
第2部 核被災を「不可視化」する力(原発事故による放射能汚染の「無被害化」 当事者性排除への疑問;何についての当事者か フランス領ポリネシア核実験の元前進基地ハオにみる当事者性;地方誌報道からみる沖縄水産業における1954年)
第3部 グローバルな連帯から考える核問題(核のゴミを押し付けられる太平洋;太平洋諸島の核実験と地域協力機構 太平洋諸島フォーラムの設立と課題;帝国のホモ・サケル 太平洋核実験をめぐる当事者性と芸術の想像力)
第4部 一人ひとりが当事者として核被災を引き受ける(ビキニ事件の「当事者」は誰か 分断を乗り越える大石又七の思想を通して;核実験の被害を解き明かす マーシャル諸島ロンゲラップの人びとはなにを被害として語るのか;被爆者と核兵器禁止条約)
著者等紹介
中原聖乃[ナカハラサトエ]
金沢星稜大学准教授(文化人類学)。夜間の社会人大学生になったとき、マーシャル諸島の被ばく問題を知り、国際関係や政治学とは異なる暮らしの視点から核問題を考えることを決めた。以来マーシャル諸島の核被害を経験した人びとに25年間インタビューを続けている。現在はマーシャル諸島デジタルアーカイブ作成に取り組んでいる
三田貴[ミタタカシ]
京都産業大学国際関係学部教授(政治学)。非核憲法を持つパラオに子供の頃に住んで以来、同国と40年以上の関係を持つ。チェルノブイリの事故がきっかけで原発に疑問を持ちはじめ、高校生のときには反原発市民運動に参画した。福島の原発事故以降、大学での教育実践を通して、福島の原発事故や若狭湾の原発立地地域の問題を学生に問うてきた
黒崎岳大[クロサキタケヒロ]
東海大学観光学部准教授(文化人類学)。在マーシャル日本大使館専門調査員として現地に赴任して以来、マーシャル諸島および太平洋諸島の国際関係についての研究に取り組んだ。この間、ビキニ環礁から強制移住した人びとへの現地調査に取り組む。外務省と国際機関太平洋諸島センターでの勤務経験から、日本側と太平洋諸島側の両政府の内情に通じた日本で数少ない太平洋諸島の専門家である(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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