内容説明
イタリア地域精神医療の現在を照らし出す50人の語り。精神科病院を廃絶し、治療の場を病院から地域へ移行したバザーリア法から約半世紀。イタリア精神医療は何を求めて変わり続けているのか?29万人の入院患者を抱える日本で精神科医として働く著者が、イタリア地域精神医療の現場を丹念に訪ね、日本の精神医療の可能性を探る。
目次
序章 日本とイタリアの治療文化
第1部 イタリア精神保健医療の歴史と制度(イタリア精神医療と国民保健サービス;イタリア精神医療の歴史と思想 バザーリアを中心に)
第2部 バザーリア思想の実践者たち(トリエステ;トレント)
第3部 トレント地域精神医療最前線での対話(医療の現場;市民としてともに暮らす;ファーレ・アッシエーメ―一緒にやろう)
終章 これまでの旅、これからの旅
付録1 トレント「再発見された言葉たち」をめぐって
付録2 PCC(Percorsi di Cura Condivisi/治療共有プロセス)3版
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kokada_jnet
83
60年代のパザーリア医師による、精神科病院の廃止の法律成立について。欧州の各国はリアルタイムで影響をうけ、改革を行ったとのことですが。日本の医療界はといえば、この件の影響がまるでなしで、近年ようやく、気が付いたようです。イタリアは公立の病院がほとんどで。日本は私立病院ばかりであるのが影響している。この本に登場する人が「日本への助言」として「精神科病院を廃止にする」運動ではなく、「病院内での良い治療を進める」活動から始めるのがよいのではとありましたが。本当にそこからはじめていたら、何十年かかるのでしょうか?2024/03/21
J.T.
7
世の中は我々の希望する速度からはだいぶ遅いけれども、確実に多くの人にとってよい住みやすい、(つまりは選択肢が多くあること)世の中になってきていると思います。そして世の中でより多くの人々に平等性をもたらしてきたのは、いつも持たざる人々が偏見に負けずに声を上げてきてくれたからです(だからといってその属性に関係のない人間は黙っていて良いということではないです。念のため)。植民地地から独立国家へ、米国の公民権運動、女性の参政権などなど。2023/02/27