目次
1部 明け方に聞いた歌
2部 解剖劇場
3部 夜の葉
4部 鏡のむこうの冬
5部 真っ暗なともしびの家
対談 回復の過程に導く詩の言葉―訳者あとがきにかえて
著者等紹介
ハンガン[ハンガン]
本名、韓江。1970年、韓国・光州生まれ。延世大学国文学科卒業。1993年、季刊『文学と社会』に詩を発表し、翌年ソウル新聞の新春文芸に短編小説「赤い碇」が当選し作家としてデビューする。2005年、中編「蒙古斑」で韓国最高峰の文学賞である李箱文学賞を受賞、同作を含む3つの中編小説をまとめた『菜食主義者』で2016年にアジア人初のマン・ブッカー国際賞を受賞する
きむふな[キムフナ]
韓国生まれ。韓国語訳書の津島佑子『笑いオオカミ』にて板雨翻訳賞を受賞
斎藤真理子[サイトウマリコ]
新潟生まれ。『カステラ』で第1回日本翻訳大賞、『ヒョンナムオッパへ』で韓国文学翻訳賞(韓国文学翻訳院主催)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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buchipanda3
109
詩集。どことなく題名の緩やかな感じに惹かれた。読んでみると、まっさらな紙に穏やかだが、きりっとした言葉が並んでいた。それは願いと祈りのような、心臓の音をかすかに感じさせるような詩。胸に手を当てた時のトクトクとした音は生を実感させる。一方でその律動は恐れももたらす。生と死を一緒に感じる。血が流れている。涙も流す。体に疵も刻まれる。だからこそ自分の身体を一つ一つ確かめながら今と向き合う。「今も永遠に過ぎ去っているところだと」。じゃあ「ごはんを食べなくちゃ」。だいじょうぶという言葉を大事に引き出しにしまって。2022/09/26
茜
60
詩自体は力強さを感じることが出来るけれど、如何せん私の読解力ではわからないことが多すぎた。でも、巻末の翻訳家対談で詩に書かれていることを少しながら補完することが出来た。誰でも一度くらいは大事な物を引き出しにしまっておいたことはあるでしょう。きっとハン・ガンにとっては夕方が大事な物の一つなのではないだろうか?詩の楽しみ方は色々だけど一読しただけではわからないことが多い。スルメのように噛めば噛むほどに味が出てくるものなんだなと思いました。 2023/02/06
masa
59
この失われた3年間に対しては誰もが無反省で、それは人類が無力さを認めたからだろうけど、時々すごくうんざりした気分にさせる。すがるように求めた情報はひとつも僕らを救ってくれなかった。たったひとつすらも。なのに今日も無闇に強制的に垂れ流されてくる情報は僕らの自尊心や時間を換金してしまう。だから僕は「知らない権利」を行使する。引き出しにしまいこんでる夕方を何度でも思い出せるように。新しい情報を遮断して、自分の目で見て自分の耳で聞く。口から出たことばはダイレクトに脳へ届くから、上書きするように君の名を呟きながら。2022/11/26
藤月はな(灯れ松明の火)
55
裏表紙にも書いてある「ある夕方遅く 私は」での「ごはんを食べなくちゃ」という言葉に惹かれた。まだある筈だった時や機会が過ぎてしまった事を不意に悟り、それらは二度と戻らないと悟った時、私たちは愕然とし、途方に暮れる。でも「ごはんを食べなくちゃ」という言葉は、地に足がついていて安心できるからだ。失ったものを悔やむのではない。今ここにある事も大切にするのも日々を生きる事なのだ。また、「心臓というもの」や「解剖劇場」シリーズには臓器ではない、痛む心とそれでも言葉にならぬ思いを謳う。それは悲鳴でもあり、祈りでもある2025/01/21
メタボン
38
☆☆☆ 今年のノーベル賞作家ハン・ガンの詩集。アンソロジーに入っていた短篇(私の女の実)を読んで気になっていた作家。詩の方は平易な言葉を使いながらも、口や目といった身体の器官と直接世界や時間とつながるイメージの作品が多いと感じた。2024/11/12