内容説明
田舎の狭い人間関係、排他的な空気、暴力的な父親、そして母親からの過度な期待と支配から逃れるように、瀬戸内の島から憧れの東京に出たマヤは、二丁目で出会った恋人・ジェシカとの結婚を機に、彼女の故郷であり、母の故郷でもある台湾へ渡る。旧暦の大晦日、ジェシカの親族が集まる年夜飯に誘われたマヤは、思いがけず思の生まれ育った町を訪れることになり、自分自身で封印していた記憶がどんどん蘇ってくる…。
著者等紹介
李琴峰[リコトミ]
1989年台湾生まれ。日中二言語作家、翻訳家。2017年、初めて日本語で書いた小説『独り舞』(講談社)が群像新人文学賞優秀作を受賞し、作家デビュー。2019年発表の『五つ数えれば三日月が』(文藝春秋)は芥川龍之介賞と野間文芸新人賞のダブル候補となる。2021年、『ポラリスが降り注ぐ夜』(筑摩書房)で芸術選奨文部科学大臣新人賞を、『彼岸花が咲く島』(文藝春秋)で芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いちろく
21
同性婚の理解が遅れている日本を離れて台湾で結婚した日本人と台湾人の女性カップルの物語。日本人女性側の人生を回顧する展開でもある。何故そうなった? という人物像の描かれ方が、短い作品の中でも深い印象。一方で、著者の作品らしく、台湾からみた日本や女性同士の同性愛など、一貫して描かれているテーマ性も。『ポラリスが降り注ぐ夜』の関連作とも受け取れるが、流石にそろそろ別のテーマや題材の作品も読んでみたい。独特な価値観を描ける著者だから、なおさら。より著者と作品の大まかなイメージが固定されてきた感じもする。2023/05/29
はるこっこ
10
16歳で1人東京に出てきた女性が、同性のパートナーと生活しながら、自分の生い立ち、家族について振り返る。母の育った場所を訪れて、母の想いに寄り添う気持ちになれたことに、心が和む。この後、母と会う気持ちになれるだろうか 過去と向き合う事で卑屈さが抜け、パートナーとより良い関係を築いていけるだろうか、など、色々想像できる物語。2023/12/11
真琴
9
★★★★☆ 瀬戸内の島から東京へ出てきたマヤ。新宿二丁目で出会った台湾人のジェシカと台湾へ渡り結婚する。日本人の父親と台湾人の母親との間に生まれたマヤは、母親の故郷の台湾で何を感じるのか。彼女にとっての家族とは、実家とは、母親とは、父親とはなんなのか。生まれ持った家族とは、結婚により出来た家族とはなんなのか。日本では認められていない同性婚ですが、同性婚異性婚問わず結婚によって生まれる家族の形について問うてくるように感じました。2023/05/15
サラマンダー
2
母親と、それぞれの考えをちゃんと話し合える未来があると良いのだけど…。ジェシカが良いパートナーで良かった。2024/04/14
アト
0
なんとなく今の気分に合っていたようで読みやすかった。「しかし、感情的になりやすい私とは違い、ジェシカは物事を冷静に見つめ、論理的に考える習慣が身についている(p94)」身についているというのが素敵だ。夏子のスカッとしたところもよかったから、彼女が登場するらしい『ポラリスの降り注ぐ夜』も読みたい。2023/10/26