内容説明
生物画家の牧野四子吉とイタリア語翻訳者となった文子、この日本人夫妻の生は時代の心理を精神誌としてあぶり出す。図案家として大杉栄、辻潤、竹久夢二、林芙美子らと交わった四子吉は、人妻だった文子と京都へ駆け落ち、そこで生態学と出会い、生物画を「天職」とした。戦時下、二人の「愛の巣」は、自身のテーマ(霊長類、核酸等)や生を追い求める男女が清新な議論を楽しむ稀有の気圏を形成した。「被災」を危機的異常ではなく常態とする二一世紀、二人の処世とその生物画はヒトの自然態について静かに触発する。
目次
はじめに 博物誌風精神誌の試み
第1章 人妻が恋に走った六月
第2章 自我・自由・美
第3章 「愛の巣箱」のエコロジー
第4章 自己―戦争下の平常心
第5章 揺れる時間
第6章 跳躍は意思の力
終章 めぐる野生
著者等紹介
船木拓生[フナキタクオ]
1947年生まれ。早稲田大学第二文学部露文科卒。1970年、“山本安英の会”事務局に入り、木下順二『夕鶴』『子午線の祀り』などの制作に携わる。“会”解散後、企画編集プロダクションを経てフリー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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