内容説明
世界の始まり。生き物たちの奇談。精霊や魂にまつわる面妖な物語。人間と動物に区別がなく、同じ言葉を話していた時代の記憶。時にユーモラスで、時に難解な“魔法の言葉”を、極北の狩猟民は世代を超えて語り継いできた。探検家ラスムッセンが未開の極地で採録した彼らの伝承を中心に、長年エスキモー文化圏の人々や自然を撮影してきた写真家が選び、和訳したアンソロジー。
目次
ノウサギが世界に光を灯した話
シロクマたちの会話を聞いた女
カアツィルニ
魔法の言葉
海獣の母、海の精霊ヌリアユク
言葉を話すウミガラス
ふたつの漫ろ話
孤児と大気の精霊
クヌークサユッカ
ナーツク
創世紀―ワタリガラスの話
俺たちは怖れているのだ
トナカイの魂の怒りに触れ大地に飲み込まれた女
イヴァルアージュクの歌
アヤグマヒャヒャ
著者等紹介
八木清[ヤギキヨシ]
1968年、長野県生まれ。1993年にアラスカ州立大学フェアバンクス校ジャーナリズム学部を卒業後、写真家・水越武氏に師事。1994年から極北の先住民族エスキモーやアリュートのポートレート、生活・文化、彼らが暮らす自然風景の撮影を続け、写真展などで発表している。2004年、日本写真協会新人賞。2005年、準田淵行男賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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榊原 香織
61
エスキモーの民話と写真で構成。 エスキモーという語は一時期差別語と言われたけど、地方性があって、必ずしもそうではないということになったみたい2024/06/03
スプリント
9
エスキモーの世界観を知る。 逸話のいくつかは他の民族でも似たような話が語り継がれていて人種のつながりを感じることができた。2024/05/03
必殺!パート仕事人
2
収録の話の多くはラスムッセンの著作から選んだそう。ラスムッセンの名前は知っていたけれど、祖父母の代にイヌイットの血が入っていて、イヌイット語も堪能だったのは知りませんでした。自然や動物に対する考え方にアイヌと共通点があるような気がします。『キツネがオオカミにサケの捕りかたを教える話』などは日本にもあるものでした。アビの被り物をしたバローの老人なんて、マタンプシ?と思いました。2024/03/03
もこもこ
1
エスキモーの伝承のおはなしです。 探検家ラスムッセンの著作からの抜粋と写真で綴られている。先住民族の語り継がれた物語は途切れてしまうかも知れない危機感、何処の国も同じかも知れないが細く細くでもつないでいって欲しい。2024/06/14
ベルモット
1
エスキモーの文化とそこに伝わる不思議な物語を、写真と共に辿るアンソロジー。 自分が見ているのはこの世界のほんの一部でしかなく、知らないことがたくさんあると実感する。 信じること、祈ること、掟を守ることは美しい。 命がけで迷いなく生きている人々と自分をつい比べてしまった。 「これはおとぎ話ではなく、本当にあった出来事なんだ。俺たちの歴史なんだよ――」2024/05/30