出版社内容情報
ここに収められた14人の作者の短編に共通する要素を探すとすれば、それは
平凡な日常からの急激な変貌、現実と虚構というふたつの異なる世界の間でのバランスではないだろうか。
本書が織りなすモザイク模様から現代ロシア文学の姿が、長年の文学的伝統と新時代の大胆な試みがまざりあった現代のロシア文学の輪郭が
いささかなりとも見えてくることを私たちは切に願っている。(L・エルマコーワ「あとがきにかえて」より)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
119
すごくいい。ペレストロイカ後に生まれたロシア新文学。14人の作家の短編『酔っ払いコチョウザメ』マーシャ•トラウブ この女性の気持ちはよくわかる。『永久運動』『クリスマス週間の話』ヴィクトル•シェンデローヴィチ ピアノと階段 遅れたクリスマス『安らぎ』エヴゲーニィ•グリシコヴェーツ 浮気する父親が助けに来た洪水に見舞われるキャンプ場『クラクフのデーモン』マクス•フライ 神にされた『リンゴ』ナースチャ•コワレンコワ 掘ったのはわたし『川に選ばれし者』ヴェチェスラフガザケーヴィチ 川は選んだも者を離しはしない。2020/01/03
藤月はな(灯れ松明の火)
61
ドストエフスキー、トルストイ、チェーホフなどを生み出し、「長い、テーマが壮大、難解」などで敬遠されがちなロシア文学。でも現代作家のは、ちっとも気難しくない。身近なロシア文学を短編集で味わおう。題名が魅力的な「酔っぱらいのコチョウザメ」は出だしにドキリとしつつも食べられる運命の為に無理にでもウォッカを呑ませられるコチョウザメに感情移入してしまうアーニャの姿にホロリ。「永久運動」は階級差を超えた理解と見せかけて優位性の脅威によって引き起こされる断絶が皮肉的だ。「優しい人々」は映画「ファーザー」のよう。2023/08/16
ヘラジカ
46
優れた短篇を集めただけではない、まさしく「現代ロシア」を感じさせるアンソロジー。期せずしてとても楽しい読書だった。アネクドート的物語から、シュルレアル、不条理劇、果てはクトゥルフ系(表題作)まで、短いながらもバリエーションも豊か。最初の三篇は小難しくなく分かり易いロシア文学として多くの人におすすめしたい。群像社の本は割高感から購入前に必ず迷うのだが、それでも読むとこれまた必ず値段相応の充実感が得られているように感じる。地味に良い本を出し続けてくれている会社なので応援したい。2019/11/13
ロア
21
現代ロシア文学はこんな事になっていたのか!14人の作者たちによる16作品。掘り出し物感のある短編集でした(*´ω`*)2023/01/13
くさてる
20
現代ロシア作家の14の短編が収録されているアンソロジー。ちょっと奇妙な話からファンタジー的なもの、現代的な話や寓話めいたものまでバラエティに富んでいて、飽きずに読めました。コチョウザメにウォッカを飲ませて運ぶ羽目になった女の子「酔っぱらいコチョウザメ」、夢見るようにふわっとした老婦人の視点から徐々に現実が見えてくる「優しい人々」暑い都会のひと夏をひとり過ごした男「安らぎ」思わぬことから聖人になった青年「クラクフのデーモン」少年と故郷の川の思い出「川に選ばれし者」などが特に良かったです。2020/03/14




