出版社内容情報
少年の成長と、町の悲喜交々の風景を、ときにユーモラスに、ときに悲しく描いたサローヤンの代表作。
内容説明
第二次世界大戦中、カリフォルニア州イサカのマコーリー家では、父が死に、長兄も出征し、14歳のホーマーが学校に通いながら電報配達をして家計を助けている。彼は訃報を届ける役目に戸惑いを覚えつつも、町の人々との触れあいの中で成長していく。懐かしさと温かさに包まれる長篇。
著者等紹介
サローヤン,ウィリアム[サローヤン,ウィリアム] [Saroyan,William]
1908‐1981。アメリカの小説家、劇作家。アルメニア移民の子としてカルフォルニア州フレズノに生まれる。フレズノはアルメニア人の多い町で、その文化に親しみながら、新聞売りや電報配達などで家計を助けた。高校中退後、職を転々としながら小説を執筆。1933年に雑誌発表した短篇が好評を博し、翌年の第一短篇集『空中ブランコに乗った若者』がベストセラーとなる。その後多くの小説、戯曲や回想録を著し、人々に愛された
小川敏子[オガワトシコ]
翻訳家。東京都出身。慶應義塾大学文学部英米文学専攻卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
115
「この物語の続きを早く、読みたい!」という本は多々あるが「この物語をこのまま、ずっと、読み続けられればいいのに」という本は結構、少ない。私にとって、この本は後者だ。何故なら、時間があっても足りない位、日常に喜びと驚きと幸福感に満ちていた子供時代を思い出したから。ビッグ・クリスとユリシーズ君、図書館、強盗さんの話、ベス達と三人の兵士さんが映画に行った話、悪夢に魘されるホーマー君、ミスター・アラとその息子の会話による幸福論が好き。そして大人になる事や悲しみに向き合い、戸惑うホーマー君への大人たちの言葉が沁みる2019/03/07
Willie the Wildcat
78
大義の下で垣間見る矛盾。現代も続く様々な格差や差別を考えると、単なる時勢の問題ではなく、人間社会の本質的な課題。主人公が日々直面する現実を通した悲哀が糧となり、大人に成長する過程。数名の例外を除いて、周囲の温かみも救い。人生の示唆に富み、主人公に物事を考えさせる会話に意義。一方、文脈から想像はつくが、結末は切な過ぎる。創造し、愛し合い/憎しみ合い、争うという循環。What goes around comes around. これが表題の背景かと推察。2021/11/02
えりか
55
なんて優しいのだろう。心があったまる。ここにでてくる人はみんな優しい。マコーリー家の人々、その次男ホーマーが通う学校の先生、彼が勤める電信局の局長や老電信士。もし悪いことをしたとしても、それはその人が悪いわけじゃない、その人に取りついているものが悪いのだ。人って、あったかい。戦地から届く家族の戦死の電報を届ける仕事を通じてホーマーは悲しみややるせなさを知っていく。深く悲しく辛い出来事の中でも、みんなで寄り添って優しく逞しく生きていく姿は眩しい。悲しみを経験して、人は人に優しくできるし、自分に強くいられる。2017/08/23
おさむ
45
戦時中の普通の米国の田舎町の家族を描いたサローヤンの代表作。大人たちは戦争に行き、残された子どもたちは悲しみを抱えつつも、明るく生きる。ペーソスに溢れてなんだか心がじんわりと温まってくるような小説です。日本人にサローヤンが人気だったのがわかる気がしました。あの寺山修司さんもファンだったとは!アルメニアからの移民の子どもだったからこそ、弱者に優しく、金満を嫌い、家族を愛することを大切にしたんですね。米国の良心という意味では、映画「スミス都へ行く」を思い出しました。2017/10/25
syota
34
14歳のホーマーは実直で行動力があり家族思い。第二次大戦が暗い影を落とし、戦争の悲惨さが通奏低音のように全体を包んでいるが、それでも彼や周囲の大人たちは、誠実に人生に向き合っている。名作『僕の名はアラム』を彷彿とさせる心温まる世界だ。米国を支える民主主義への信頼と人の善意に対する信頼も強く感じる。この作品が書かれた20世紀中盤には、まだ人や社会に対しこのように全面的な信頼を置くことができたのだ。この数十年で我々の生活は急速に豊かになったけれど、それと引き換えに精神的な豊かさを手放してしまった気がする。2019/09/30
-
- 電子書籍
- Golf Style(ゴルフスタイル)…
-
- 電子書籍
- ドラえもん デジタルカラー版(49)