内容説明
「どうせ分かってもらえない」をときほぐす。最注目の言語哲学者、一般書デビュー!
目次
第1部 理論編 言葉の本質(人間の言葉は魔術だ;「言語化」の手前にあるもの;あいまいさが生む言葉の本質;空気・皮肉・げんかつぎの言語学)
第2部 応用編1 嘘、誤解、もどかしさ(聞き手をコントロールするコミュニケーション;誤解のメカニズム)
第3部 応用編2 生きるに値する孤独な世界(文化の尊重と、個人の尊重;自分らしさの言語学;「月がきれいですね」が「あなたが好き」になるとき)
著者等紹介
小野純一[オノジュンイチ]
1975年、群馬県生まれ。自治医科大学医学部総合教育部門哲学研究室准教授。専門は哲学・思想史。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。ベルギー・ゲント大学文学部アジア学科研究員、東洋大学国際哲学研究センター客員研究員などを経て現職。本書が初の一般向け著作となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
takka@ゲーム×読書×映画×音楽
14
これも最近の自分の中で考えたいテーマ「言葉」きっかけで読んだ本。言葉の意味やイメージは、その人の背景から生まれる。また、それ自体もだんだんと変化していく。経験自体は共有できないことから言葉のイメージが食い違い、誤解につながっていく。その誤解を解消するために、本著では言葉のニュアンスにセンシティブになること、言葉は自分ごとではなく相互作用の力によって昇華していくことを説いている。私自身過去の経験から孤立する時間が長く、そのせいかつい主観で話してしまうことも多いため、今後さらに成長するための課題にしたい。2025/04/29
じゅん。
7
言語学はほんとに面白いな。特にこの本は、言葉が生み出す誤解、それでもなお幸せはそこにあると、伝えてくれる。また内容だけでなく、ちりばめられた詩的な表現はとても胸を打つ。「私たちは自分だけの経験を表現するとき、自分にしかできない述語づけをします。そのような言葉は、没個性的な暗闇に輝く宝石をちりばめて、互いを照らしあって美しく輝くように印象的です。なぜなら、そのとき述語はもはや一般的な意味を伝える記号ではないからです。それはさまざまな経験を意味として相互に反射する星座をなします。」p258 美しい。2025/04/30
zunzun
5
自治医大の准教授で、哲学・思想が専門の著者小野純一が「言語化の意味と役割」についてかいたもの。ビジネス系の「言語化」とは一線を劃す内容で、言語が人間にとってどういうものなのかを仔細にかいており、《言語化》アレルギーをもっている私ズンダのような人間でもよく読めた。というより、ビジネス系の《言語化》と本書の《言語化》との間には懸隔があるといったほうがよい。前者は商売のためにいかに言葉巧みに商品を売るかといったもので、後者は言葉が人間の社会や個人間のやりとりにかぎらず、自己をあらわすものとして捉えているからだ。2025/04/17