内容説明
作家生活40年の集大成!コロナウイルスに対する意思決定は、敗戦のあの日から何も変わっていない―。猪瀬直樹が今最も伝えたい、「私」の国・日本に欠けている概念とは。日本国・意思決定のマネジメントを問う。NewsPicks人気連載イノベーターズ・ライフを大幅加筆・修正のもと書籍化!
目次
第1部 新型コロナウイルスと意思決定(“孤島”ダイヤモンド・プリンセス号;対策本部の意思決定;議事録の意味 ほか)
第2部 作家とマーケット(カズオ・イシグロと「公」の時間;クリエイターとしての作家の誕生;森鴎外の「家長としての立場」 ほか)
第3部 作家的感性と官僚的無感性(表層を漂う全共闘;『ミカドの肖像まで』;官僚機構の正体をつかむ。『日本国の研究』 ほか)
著者等紹介
猪瀬直樹[イノセナオキ]
1946年長野県生まれ。作家。87年『ミカドの肖像』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。96年『日本国の研究』で文藝春秋読者賞受賞。東京大学客員教授、東京工業大学特任教授を歴任。2002年、小泉首相より道路公団民営化委員に任命される。07年、東京都副知事に任命される。12年、東京都知事に就任。13年、辞任。15年、大阪府・市特別顧問就任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ころこ
30
結構驚いたのが、多くの読者が著者を保守政治家だと認識していたことです。団塊世代特有の不用意さはあるものの、立花隆に酷評されたようなキッチュさが売りのノンフィクション作家だったはずです。著者が「昭和16年の開戦」を原点と自認することで今回のタイトルである「公」の問題を書き続けたことになってしまっています。実際には浩瀚な本の中身はもっと猥雑なもので、作家が過去を振り返ることで均されてしまっている印象を受けます。それらを掬い取れない網の目である現在の著者は、作家ではなく政治家との印象は拭えないのかなと思います。2020/11/13
T.Matsumoto
9
猪瀬氏の著作ならびに政治的業績の総集編です。作家という枠にはまらない活動には感銘を受けました。道路改革やオリンピック誘致のエピソードなどは、やっぱり面白いです。都知事辞任の原因とされた徳洲会からの資金も収賄じゃなかったのは初めて知りましたが、なんとも勿体ないことをしたと思います。タイトルの「公」に関する記述は少ないのですが、家長の意識をもち「公」の意識を持たないと進化がない、とメディアに問題提起するところがハイライトなのかな。猪瀬直樹入門書としてお薦めしますが、ファンとしてはやや物足りないかもしれません。2020/10/23
Kazuturas
3
ノンフィクション作家が、どのように道路公団民営化などに関わり都知事として活動していたのか、学生紛争のリーダー時代までも遡りながら語る。官僚主義日本の戦後の総括のようでもあり、自叙伝として彼の作品群への導入でもある。「家長」としての歴史的責任を果たすべきと、官僚主義を難じる。メディア上の発言からなかなかにハードコアな保守主義者と見受けるが、ノンフィクション作家としての矜持と技術的な制約によるのか、歴史文書に対する立場が進歩的というかリアリストで、歴史の現実を見つめようとしているのが面白い。2020/11/21
HYdaniel
2
「公」という大きく出たタイトルと重めの表紙の割に、論考は軽くあっさりしている。とはいえ一つひとつの指摘はもっともであるし、猪瀬さんの問題意識もわかる。総力戦研究所のくだりや、道路公団民営化時のやりとりは、あらましを知っていても成程と思うものがある。要約すれば、国家を動かす意思決定はオープンな議論に基づかなければならない、なんとなくの空気であってもいけないし、政治家や官僚だけの閉じたグループであってもいけない、そうした議論に参加する自由なプレーヤーが必要である、ということに尽きる。2020/09/16
mm71
2
著者の自伝であり、集大成的作品。行政経験が豊富なため、感染症対策本部の会議時間、意思決定の仕組みというか仕組みにない不透明さの論評が興味深い。2020/08/24