内容説明
英国植民地支配が生んだビジネス空間は、中国返還後50年間約束された「一国二制度」の「高度な自治」のもと、自律の「香港人」文化を育んできた。今、香港はあからさまな権力に抑えつけられ、抵抗や抗議だけでなく、分断や格差もあらわになっている。香港に生きる様々な立ち位置の人びとは、未来をどう展望しているのか。暴力を、沈黙をどう考えているのか。自由と民主、経済と政治、人的交流のエネルギーのせめぎあう東アジアで、中国のフィールドワークや人権派弁護士支援を重ねてきた著者が、問いの共有を模索する。やわらかで熱い知性の省察。
目次
1 スターリー・シスターズ
2 暴力と非暴力の間
3 マスクとメディアと言論
4 「敵」はどこにいるのか
5 批判的思考と教育の中立性
6 分断される社会
7 つながっていたい
著者等紹介
阿古智子[アコトモコ]
現代中国研究、比較教育学。1971年大阪府生まれ。大阪外国語大学、名古屋大学大学院を経て、香港大学教育学系Ph.D(博士)取得。在中国日本大使館専門調査員、早稲田大学准教授、東京大学大学院総合文化研究科准教授などを経て、同教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ののまる
14
この本が書かれた数ヶ月後の今、もっと酷い状況になっている。そして、香港国家安全維持法のために、香港のリアルな状況が、現地からの発信制限が多くなってきて、なかなか見えづらくなってきている。本当にウイグルのようになってしまうのか…、でも「香港人は本当に強い」ので、みなが絶望していないと信じたい。2021/01/11
犬養三千代
5
民主はないが自由はある。香港の現状を日本人の目から見ている。一国二制度がなし崩しになっている現実にNOを突きつける人達。そしてその果には監獄がまっている。返還前の美しく元気だった香港を知っているので、残念!明日は我が身になるかも?中国は厳しい隣国。尖閣、沖縄、、、2021/03/02
Peso
2
国家安全維持法が可決され、世界から「香港は終わった」と囁かれる中でも諦めない香港の人々。解決の糸口を探るため、台湾の状況などから民主的な話し合いの方向へアプローチする。2021/04/01
金魚カフェ
2
筆者は現代中国研究者であり、比較教育学者である東大教授。でも、語り口も内容も、1人の人としての実体験ばかりを具体的に述べており、とても臨場感に溢れている。香港台湾中国のニュースで聞き流していたことの意味を考えさせられる。筆者の各国への想いの深さと熱さを感じる。戦争を防ぎ平和な生活を守り尊厳を持って生きるために。一つ一つの小さな問題や悩みと真摯に向き合うことが民主主義や自由を追求することにつながるから。その理念を胸にこれだけ活動していることに脱帽。日本でのんびりしている自分に喝。2021/01/02
かるた
1
著者が出会った人々、一人ひとりを起点としつつ、香港・台湾・中国・日本における自由と民主主義の諸相が丁寧に語られてゆく。政治と生活は繋がっているし、香港と日本も繋がっている。2020/11/11