内容説明
「ここに魔法をかけておいたからね、といわはった―」。きょうだいたちと母、そして父―。家族は継がれて、生きつづける。
著者等紹介
砂岸あろ[スナギシアロ]
京都市生まれ、京都市在住。京都精華短期大学(当時)で美術を学び、1986年よりアトリエ・ウーフ絵画教室を主宰しながら、少女マンガ原作、児童文学、エッセイなどを書く。「海の方法」同人(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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へくとぱすかる
50
読みかけた瞬間から、幻想的な気分に包まれた。物語自体が幻のように展開し、もしもその風景を色で描くなら、淡いパステル調、またはグレゴリ青山さんが月の光に喩えたように、絵の具を月光で溶いた色で、としか言いようがない。子どもたちと母の、過ぎ去った時代の繊細でなつかしい日常。没落と喪失の予感が漂いながらも、懸命に生きていく時間の美しさ。現実の京都・山科の地と並行しながらも、少しだけ妖しさを感じさせる世界は、まさにタイトルの通りで、とても魅力的だ。児童文学の持つ透明感が、世代間を描く文学を貫くトーンになっている。2021/03/02
かもめ通信
17
(山科ってどこ?)というぐらい土地勘がなく、まったく知らない人たちの物語が、どうしてこんなに郷愁を誘うのでしょうか。そしてあの、時折、庭に現れる不思議な人たちはいったい……。この本をきっかけに、久々に志賀直哉を再読しました。この本を読んでいたら、ふと懐かしくなって、本棚から朽木祥さんの『引き出しの中の家』をひっぱりだしました。そしてこの本を読み終えた後も、作中に登場し、巻末にも収録されているクリスティーナ・ロセッティの『望み』という詩の一節が、頭の中で繰り返し朗読されています。2021/03/08
チェアー
7
山科という場所は、京都の中心部から少し離れて、すべてが落ち着いて、静かに見える土地だ。 だから、亡くなった人がいてもおかしくないし、会話できてもいい。思いがかなうと信じていれば、きっとそうなる。山科だから生まれた作品。2021/02/18