内容説明
“運命”の問題は、『白鯨』という作品の急所を衝く。エイバブを悲劇的な英雄と見なすのでも、イシュメイルをエイバブの批判者と見なすのでもなく、メルヴィル自身も自覚していなかった運命観を読みとる。それは、エイハブがモービィ・ディックを追跡したように、生に対する最も深い肯定がなされている『白鯨』というテキストそのものを探求(=精読)する行為である。
目次
クィークェグの樫棒
イシュメイルの急場の産婆術
イシュメイルの、エイハブとの近さと隔たり
エイハブの狂気のかたち
個体であること
エイハブの悪と神の悪
“性格”としての“運命”
“全体”の相貌―海・白さ・捕鯨
鯨のレッスン
鯨の“かたち”を歌う
「物語作者」イシュメイルの脱皮
いかにして“中心”に向かうか
世界と交わる
著者等紹介
堀内正規[ホリウチマサキ]
早稲田大学文学学術院教授。19世紀アメリカ文学、とりわけラルフ・ウォルドー・エマソン、ハーマン・メルヴィルなど。ボブ・ディラン、日本の現代詩などについても執筆活動をする(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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トクナガ
1
白鯨についての様々な解釈方法が提示されるといった本。自分では絶対に考えつかないような見方があるし、それらも説得力がありそうなものが多く面白い。自分は白鯨を読んだが正直全然読めてなかったなと感じた。白鯨についての読み方がわかる本でもあると思うので、白鯨の本編を読む前にこの解説本を読んでもいいんじゃないかと思う。2024/11/03
peeping hole
0
『解体』を読んだので。研究者らしく白鯨の論点を総ざらいしつつ、逐一検討していく。この本読まなければ「タウン・ホーの物語」の魅力にも気付けなかったと思う。あとがきの実存エピソードにしてもそうだけど、読んできた『白鯨』関連書籍の中で本編よりもずっとガチな語り口にやや肩が凝ってしまった。資本論並みにゲラゲラ笑いながら白鯨読んでいたのでこの身の賭し方にはビビる。2021/03/17