内容説明
この本を開けば、氷室冴子にまた会える。知人への取材や新たに見つかった資料、入手困難な雑誌の掲載記事まで徹底調査。少女小説家だけではない、多彩な活動に光を当てたファン必読の一冊。本書初公開、氷室冴子が学生時代に執筆した少女マンガ論「少女マンガの可能性」の手書き原稿収録!
目次
第1章 氷室冴子以前―文学と少女マンガの揺籃期
第2章 作家デビューから『クララ白書』まで
第3章 マンガ原作の仕事と初連載『雑居時代』
第4章 一九八三年・八四年にみる多様な作品群
第5章 『なんて素敵にジャパネスク』と少女小説ブーム
第6章 男の子の行方―氷室冴子の少年主人公小説
第7章 少女小説から離れて―エッセイと一般小説の仕事
第8章 イメージから生まれた物語―『海がきこえる』
第9章 古代への情熱―『銀の海 金の大地』
第10章 氷室冴子は終わらない―九〇年代後半以降から
附録―「少女マンガの可能性」
著者等紹介
嵯峨景子[サガケイコ]
明治学院大学非常勤講師、フリーライター。1979年生まれ。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。専門は社会学、文化研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぐうぐう
41
忸怩たる思いがする。本書を読んで、久しぶりに氷室冴子が並んだ我が本棚を見返してみて(同じことをした読者がたくさんいるはず)、恥ずかしくなったのだ。著者が本書を書こうと思った大きな要因にもなっている、氷室冴子は少女小説家というカテゴリに収まりきれない才能を持っていた、とする解釈に大いに肯き、それこそコバルト時代から、その可能性に胸をワクワクさせながら氷室冴子の小説を読んでいたはずなのに、俺の本棚には『銀の海 金の大地』が一冊もないことに今回気付かされた。(つづく)2021/01/29
ダージリン
36
氷室冴子さんの人生を辿るように、その時代における著作のこと、動向を丁寧にまとめられていて感動しました。青春期に氷室冴子さんの本に出会えていた幸せを改めて噛みしめつつ、また縁をつないでいけたらと思います。著者自身の想いを書いたあとがきにも感銘を受けました。2019/12/01
hoco
14
この評論を書いてくれてありがとう。著者の嵯峨景子と私は同年代ですが、数年、私の方がお姉さんです。しかし、その数年の差が、80年代の氷室作品を思春期に読めるかどうかの分かれ目だったのでしょうか。対談やインタビューなど、今となっては入手の難しい雑誌の記事が豊富に引用され、とても興味深く、一息に読みました。少女小説家、氷室冴子の葛藤に、当時の私は全く思い至らず、彼女が見せてくれる世界がただただ楽しくて、没頭して読んでいました。「少女」という普遍性を持つ素晴らしい小説であったと、思春期に読めて幸せだったと(続く)2021/04/10
hitotak
9
この本は氷室氏のほぼ全ての作品の主題、粗筋が詳細に書かれていて、忘れていた作品や読んだ当時の感想等も次々に浮かび、本当に懐かしかった。かつて一世を風靡したと言っても過言ではない氷室冴子だが、突然の休筆とごく近しい人しか知らなかった闘病があり、亡くなってから既に10年が過ぎた。あれほどの人気作家だったがブランクが長く、90年代以降に生まれた世代には殆ど読まれていないという。氷室作品が次世代まで読み継がれることを願いたい。著者は終始客観的に分析しているが、あとがきに書かれた氷室作品への思い入れにも共感した。2020/03/13
相馬
8
嵯峨さんの氷室冴子研究本。これは超傑作。読むべし。詳細な資料、インタビューを通して、氷室さんの作品、作法などを年代順、作品(種)別に10章に分けて言及してある。「氷室冴子以前」「『なんて素敵にジャパネスク』と少女小説ブーム」「古代への情熱『銀の海 金の大地』」などの章題からその内容・構成が分かるだろう。どれも興味深く読んだが、特に「第6章 男の子の行方」が個人的に頷け、興味深かった。それにしてもつくづく氷室さんの早すぎる死は残念に尽きる。2020/01/04