内容説明
「国民的歴史学運動」は忌まわしき過去の悪夢なのか?地域に生きる人びとの側から、具体的な運動のありようを明らかにし、そこで生み出された歴史叙述から戦後日本史像を問い直す。
目次
序章 問題の所在と本書の視角
第1章 地方における国民的歴史学運動の展開―民主主義科学者協会地方支部の動向から
第2章 地方における国民的歴史学運動指導者の実践―民主主義科学者協会奈良支部の奥田修三を対象として
第3章 地域青年層の戦後意識と国民的歴史学運動―城南郷土史研究会を対象として
第4章 地域における歴史叙述―一九五三年の南山城水害・台風一三号災害をめぐって
第5章 国民的歴史学運動から歴史教育へ―加藤文三の運動経験と教育実践を対象として
第6章 国民的歴史学運動のゆくえ―地域における運動の継承と変容
終章 総括と展望
著者等紹介
高田雅士[タカダマサシ]
1991年生まれ。2020年、一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。現在、一橋大学大学院社会学研究科特任講師(ジュニアフェロー)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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tnk
1
歴史の研究会を立ち上げた直後、南山城水害に襲われた市民らは被害拡大の元凶を歴史や現代政治に見出す。民科と協力しつつ反発も覚える様相を描き、国民的歴史学運動を地域から考察する2023/07/09
TOM
1
これまで戦後歴史学の"悪夢"の如く「封印」「忘却」されてきた国民的歴史学運動を、歴史学研究者ではなく、地域や歴史教育の視点から再評価を試みた一書である。 京都府南部や奈良をフィールドに、地域に生きる人々が自分たちの歴史を「再発見」することによって、主体的に自分たちの歴史を編もうとしていたこと、逆に落下傘のように地域に入り込んでいった研究者たちとのズレが生じていたことなどを、当時の会報・会誌、あるいは聞き取りによって明らかにする。戦後史学史・民衆史・ 思想史研究書として大変重要な成果であると思う。2023/01/07