少年と罪 - 事件は何を問いかけるのか

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  • サイズ 46判/ページ数 272p
  • 商品コード 9784909753007
  • NDC分類 368.7
  • Cコード C0036

出版社内容情報

社会を震撼とさせた重大少年事件の加害者、被害者、双方の家族などを取材。事件の背景やそれぞれのその後を描く渾身のルポ。神戸連続児童殺傷事件から20年あまり。いまだ少年への憧れを隠さない子どもがいる。その一人、名古屋大学元学生は知人女性を自宅アパートで殺害、高校時代には同級生にタリウムを飲ませた罪で無期懲役となった。「人を殺してみたかった」。少年Aも元名大生もそう口にした。だが社会はそんな少年たちの心の闇に正面から向き合ってきただろうか――。社会を震撼とさせた重大少年事件の加害者、被害者、双方の家族、司法関係者などを丹念に取材。事件の背景や加害少年たちの内面に迫ると共に、被害者家族の悲しみと苦しみ、加害者家族の過酷な現実を描き出した、渾身のルポルタージュ。少年法の適用年齢引き下げの議論が本格化するなか、少年事件の実相を知るために欠かせない一冊。

第1部 戦後史に残る2つの少年事件

第1章 「A」、20年

1 自身の不遇を十四歳の凶行に重ね/2 傾倒の日々を公言する少女/3 「透明な存在」捨てた/4 変化した「疲れた子ども」/5 心の深手、理解と疑問/6 自身に負けた敗残者/番外編 妙な少年、極秘マーク―刑事部長・深草雅利氏の証言から 

interview 雨宮処凛●世界との距離を縮め、Aと決別/土師守●厳罰化より適正化を 



第2章 木曽川・長良川連続リンチ殺人事件

1 少年法の壁、遺族置き去り/2 寂しさ抱える「ええ子」/3「居場所」を失い転落/4 集団心理、引けず凶行/5 反省願いつつ墓を探す/6 議論尽くし、全員を極刑に

topics  戦後の少年事件の変化と特徴 



第2部 ネットの魔力

第3章 翻弄される少年たち

1 十一歳の殺人、漂う偶像/2 言葉の暴力、続く立件/3 カネと注目、求めた末/4 安直な動機、高い代償/5 驚く研究力、捜査後手/6 匿名の攻撃、実害が次々と/7 「答え」は現実の中にこそ 



第4章 ライン殺人事件

1 引けぬ応酬、命を奪う/2 侵入許せず、攻撃が加速/3 手軽な交流、共犯招く 

interview  スマイリーキクチ●本当の正義は匿名で人をたたかない/土井隆義●居場所を求める「拡張現実」 

topics  ネットと少年事件の変遷 



第3部 加害者家族、被害者家族

第5章 ある「通り魔殺人」から

1 日常一変、絶望と指弾/2 挫折、孤独、過去を見つめて/3 償うため、一緒に動機を探す



第6章 さまよう家族

1 親の責任を問うために/2 なぜ隠した、親友の悔い/3 発達障害、光明求めて/4 許せない、けれど会う/5 思い上がり、叱り続け/6 永山の教訓、いまこそ 

interview  阿部恭子●子どものSOSを受け止めて 

topics  加害者家族からの発信/少年事件の司法手続き 



第4部 更生を阻むもの、支えるもの

第7章 塀の中へ再び

1 更生の道、なぜ捨てた/2 刑罰の場、育たぬ自覚/3 変わるために支えが必要/4 居場所は自立への一歩/5 謝罪に導く仮釈放を 

topics  重大な少年事件の再犯率/報道は実名か、匿名か 

interview  田島泰彦●実名は大事な情報。事件ごとに慎重判断を 



第8章 更生への道

1 分岐点で思う亡き友/2 我慢の先に未来はある/3 給料の重み知り、「受け子」を悔いる/4 孤立させず、雇い守る/5 信じてくれた人を胸に 



第9章 生と死の境界で

1 償いきれぬ苦悩残し/2 許されずとも続ける/3 生きて命と向き合う



第10章 少年法改正議論を考える

1 更生か厳罰か、揺れ続け/2 世論や被害者感情配慮、四度の改正 

interview  薬丸岳●元少年とどう向き合うのか。『友罪』で周囲の人物描く/武藤杜夫●少年院を日本一の学校に。「だめな集まり」の偏見なく

す 



第5部 元名大生事件

第11章 元名大生は何を語ったか――初公判から判決まで



第12章 解明されなかった闇

衝撃/支援/更生 

special report 私たちは事件から何を学ぶか 

元名大生事件 判決要旨 



終 章 取材ノートから

中日新聞社会部[チュウニチシンブンシャカイブ]
編集

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

M

69
中日新聞社のルポ。元名大生の事件を深追い。あれだけ明らかな発達障害で、少年審判でなく成人と同じ刑務所行きだと更生の余地が危ぶまれる。厳罰よりも更生(少年医療)をと被害者遺族が望む意味がやっと少し分かった。刑期満了の方が仮釈放より再犯率が高いことも、厳罰より更生が再犯防止に効果的ということを示している。仮釈放の方が観察保護やケアが厚いので出所後の社会復帰がしやすいのだそう。それにしても、極貧や虐待等が理由でない元名大生のような犯罪者もいて。異常性の察知と精神科受診が早ければこうならなかったのだろうか…謎。2019/02/25

ゆみきーにゃ

68
《図書館》刑務所と少年院の違いを初めて知りました。すっごく勉強になる一冊。元名大生は果たして社会に戻れる日が来るのだろうか。2019/11/25

小鈴

29
神戸連続児童殺傷事件の少年Aからはじまり、その影響を受けた少年事件を手堅く追う。中日新聞なので愛知県や東海地方の重大少年事件を追いつつメインはやはり名大の事件。各事件の被害者の親、加害者の親や関係者、支援団体、専門家などの目から見た事件。よくまとまっているので少年事件に関心があるならオススメです。名大事件では彼女の父親は裁判でも取材でもコメントしていないのか。神戸の事件でAの極秘捜査をしていた深草雅利刑事は和歌山カレー事件も担当。相当のやり手とみた。名前を覚えておこう。2019/02/03

澤水月

19
元名大生の裁判記録が物凄すぎ…法廷で裁判官(ら)に「ネクタイをしてほしい」「首を絞めたい」と言い放つ…北九州連続監禁のように余り情報が出てこないと感じていたが余りに猟奇すぎたのだろうか、地元中日新聞の粘り強い取材が多方面に巡らされた力作ルポ。他市川一家4人殺害、長良川リンチなど有名事件の加害者や遺族(赦す気持ちを持った方、許せない方どちらも)らに話を聞く。絶歌出版後の関係者たちの思いも。事件一つ一つは決して類型化出来ず内心の更生も千差万別。聞き取り後に物故の方も複数おられ遣る瀬ない2018/12/29

てくてく

13
兵庫児童連続殺傷事件から元名古屋大学生による殺人までの重大な少年事件の取材をまとめたもの。連載記事もある程度読んでいたので、復習という感じで読んだ。 兵庫の事件については、ネットの普及前ということで加害少年の情報が氾濫していなかったことが加害少年の英雄化につながってしまったかもしれないこと、当事者の語りによれば重大な結果をもたらした事件に至るまでの躊躇いがあまりないような印象を与えることが印象的だった。 子を持つ親として加害者にも被害者にもなる可能性のある子にどう接していくかが本当に悩ましい。2019/01/27

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