感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
161
「連帯」という言葉の使い方がわからなくなって久しい。著者は、コロナで資本主義など既存の体制が麻痺することにより、新たな連帯が可能になったというが、ストンと腑に落ちなかった。だから考えたい。自宅でテレワークを行える人とそうでない人、また医療従事者のように危険と向き合わねばならぬ人…コロナは新たな断絶を生んだ。自己搾取の罠にハマって意味もなく疲れている私は、他者の「値打ちある疲労」を心の中で労うことしかできない。他者の中に自分という問いがあると著者はいう。この大きな問いを、自分自身の問いに為しうるのだろうか。2020/09/20
ころこ
37
おひさしぶりです!目の前のひとには触れられないのに、触れない外の世界では同時に同じ事が起こり、我々は否応なく巻き込まれてしまっています。以前はこの近遠ふたつの関係が、逆ではなかっただろうか。触れられないもどかしさ以上に、本来は自分に関係なかった人から、唐突に様々な要求をされることの気持ち悪さには辟易します。目の前に居ないひとは、ひとの心の中に手を突っ込まないでほしい。そのことに警鐘を鳴らしているのはアガンベンであり、ジジェクはこの契機に社会的連帯とコミュニズムの可能性をみています。とはいえ、本書は随所に鋭2020/07/01
壱萬参仟縁
34
健全な社会には複数の声があるべきだ。李文亮医師のことば(12頁)。噂は嘘だ(53頁)。ボッカチオ『デカメロン』は、フィレンツェを襲ったペストから逃れるため、別荘に引きこもっていた7人の若い女性と3人の若い男性が物語る構成(65頁)。コロナウイルスの脅威は亡霊のような幻想として経験される(90頁~)。資本は亡霊のような存在である(99頁)。ウイルスと資本のつかみどころのなさをジジェクは言っているのだろう。つかみどころのない、見える化できない相手にどう対峙、退治できるか。2021/05/06
ケイトKATE
30
スラヴォイ・ジジェクが新型コロナウイルス発生から3ヵ月で考察した文章に、私は驚嘆させられた。ジジェクは「五点掌爆心券」を引用して資本主義の終焉を宣言して笑えるが説得力がある。そして、人類の未来の選択には、”野蛮”か”再考案された共産主義”かと訴えているが、プーチンの暴挙が示しているように、野蛮を選択してはいけない。一方で、共産主義に対してソ連や中国が浮かんで拒絶反応を覚えるが、私は全体主義であると思っている。ジジェクが主張する共産主義は、人類の全員が参加して決める制度であって託す価値はあると思う。2022/11/05
Aster
27
世界の終わりにも批評をしてくれそうな勢い2024/04/17