内容説明
五大陸の交差点と言われる中南米カリブ海域は夥しい数の島を擁し、ハイチやジャマイカ、トリニダード・トバゴといった小さな国々はそれぞれ固有の苦難の歴史を経ており、その特異性や文化の多様性において世界の中でも際立つ。ヨーロッパ諸国の植民地政策の犠牲となった地域であり、その負の遺産は多くの島国が独立を果たした現在でもなお残存しているが、そんな逆境の中から二十世紀後半以降異色の文学が花開くようになる。英領セントルシア出身のノーベル賞詩人デレック・ウォルコットの作品「オメロス」「オデッセイ」などを中心に、カリブの歴史と社会を強く反映し、国家的アイデンティティを模索し、アフリカの悲劇の記憶をしっかりと織り込むカリビアン文学の一端を著者の鮮烈な経験を交えつつ紹介、考察する。
目次
序章として 新世紀の幕開けから現在へ(激震の年明けに 2024;或る弔辞に寄せて―E・ボゥからD・ウォルコットへ―(2017)
カリブの詩学と脱植民地主義 ほか)
第1部 世界の裏窓から―カリブ篇(「誰でもない」わたし;ナイポールとウォルコット;カリブ海のホメーロス ほか)
第2部 カリブ海の余波―追補版として(今なぜカリブか?;帰っておいで、私の言葉よ!;裏窓から世界が見える―ハイチ ほか)
第3部 持ち帰った現地通信―トリニダード・トバゴだより(カーニバル、カーニバル2002)
著者等紹介
谷口ちかえ[タニグチチカエ]
旧満洲奉天生まれ。京城(現ソウル)から3歳で大分県に引き揚げる。9歳で上京。早稲田大学時代に詩作を始めるも、そののち中断(30代後半に英語のtutorを務め、詩作も再開)。早稲田大学第一文学部仏文科・一橋大学言語社会研究科修士修了。詩誌「幻視者」「橋」「砂」「地球」を経て現在、同人誌「ここから」所属。(一社)日本詩人クラブ、日本現代詩人会、日本文藝家協会所属(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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