内容説明
九鬼周造の「偶然性」を、西洋哲学との関連性や位置づけも整理しながら、感性ではなく論理的帰結として確立した哲学に昇華させた近年随一の明晰な九鬼論。
目次
第1部 九鬼哲学の来歴(九鬼哲学を考えるための準備作業;「哲学」とは何か)
第2部 存在論理学としての九鬼哲学(「存在論理学」への道;「存在論」と「様相論理」―ニコライ・ハルトマンの批判的受容;「存在論理学」とは何か;存在論と実存論的分析―ハイデガーからの影響)
第3部 偶然を生きる倫理を目指して(偶然性の形而上学と個体論;偶然と選択、あるいは運命について;偶然性の倫理とは何か)
著者等紹介
宮野真生子[ミヤノマキコ]
福岡大学人文学部准教授。1977年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程(後期)単位取得満期退学。博士(人間科学)。著書に『なぜ、私たちは恋をして生きるのか』(ナカニシヤ出版、2014年)、著に『急に具合が悪くなる』(晶文社、2019年)、『愛・性・家族の哲学』シリーズ全三巻(ナカニシヤ出版、2016)。論文に「九鬼周造の存在論理学」(西日本哲学会若手奨励賞受賞)、「個体性と邂逅の倫理―田辺元・九鬼周造往復書簡から見えるもの」(日本倫理学会和辻賞受賞)、他(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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シッダ@涅槃
27
[図書館本]とにかく引き込まれて読んだ。引き込まれた要因として「人間は不可解な事象に対して論理的に究明しようとせざるを得ない存在」(まるで正確なまとめでも引用でもないけど)と初めに定義しているところである。◆「論理編」と「倫理編」に別れてるといってよいが、「論理編」の中盤、ニコライ・ハルトマンと九鬼の比較の辺りは難解で泣きそうになった。読書メモくらいは取っておくべきだったと思うが、元来ズボラでねえ……◆後半「倫理編」は、論理編に較べを充分刺激的でリーダブルだった。2020/08/14
hdk
2
2022年72冊目。『急に具合が悪くなる』の宮野さんの九鬼「偶然性」本。まずタイトルと装丁の美しさに惹かれた。無い可能性もあったがこうある自分という存在。出逢わないこともあり得たのに出逢った人々。無の深淵の仮小屋のような生において他者との驚くべき偶然の出逢いによって自己は生成されていく。他でも無い自己はそうした邂逅によるものである以上、理不尽な現実(=他でもあり得た偶然)も引き受けて善くあろうという態度の倫理性。命を左右する病が身体を蝕む中、悔しかったろうがそれを引き受ける宮野さんの覚悟の尊さに深く共鳴。2022/09/11
Go Extreme
2
九鬼哲学の来歴: 九鬼哲学を考えるための準備作業 「哲学」とは何か 存在論理学としての九鬼哲学: 「存在論理学」への道 「存在論」と「様相論理」―ニコライ・ハルトマンの批判的受容 「存在論理学」とは何か 存在論と実存論的分析―ハイデガーからの影響 偶然を生きる倫理を目指して: 偶然性の形而上学と個体論 偶然と選択、あるいは運命について 偶然性の倫理とは何か)2021/12/29