出版社内容情報
斎藤幸平［］
著・文・その他
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
88
［再読必須］マルクスは資本論を完成できずになくなった。今の第2部、第3部はエンゲルスの編集になるもの。実は、この編集から漏れたマルクスの遺稿が近年徐々に刊行されつつある。その中には、１９世紀半ばでありながら、２０世紀後半となってようやく世界の経済学者に留まらず環境に関心を持つ者たちが危機をつのらせる問題意識が示されていた。当時の農業や経済の研究者には今で言うエコロジーの認識に通じるような問題意識を持つ識者がおり、マルクスは経済学のみならず生物学化学とかなりの自然科学を学習しメモしていた。2020/03/12
那由田 忠
22
流し読み。新マルクス・エンゲルス全集(MEGA)の新資料に基づき、百数十年前（地球環境問題が見える百年前）にマルクスが自然科学を学習したメモを丁寧に解読し、資本主義が自然の撹乱を起こす矛盾を回避できないことに気づいたが、資本論に反映されなかったと力説。マル経的にはそれですむけれど、疎外やらアソシエーションと語れば新しい社会的管理体制が可能となるという幻想をふりまくだけ。資本家の階級的本能から地球崩壊を避ける規制を受け入れるだろうから、労働時間規制と同じように修正資本主義の対応しかないのだけれど。2021/12/30
またの名
9
「僕が燃えてるのが分からないの？」と夢で息子が訴えるフロイト的な気候異常に「なんだ令和ちゃんか」と擬人化で誤魔化すような逃避を、マルクス読解により無化する労作。はじめ農芸化学者リービッヒとともに科学技術が環境問題を解決するとポジティブにシンキングしてたし今なお世間的にもそう認知されてるマルクスが、研究を深めるうち見解を変えたリービッヒを追って、自然と人間の間で循環する物質代謝という概念に辿り着く、忘却された過去を復元。何よりマルクスを口実に科学万能主義で環境問題はOK派を説得的に否定したのが本書の、意義。2022/07/07
ぷほは
9
トークイベントで著者にお会いした際、最近の社会学者の経済論について質問したときにバッサリいかれたことが今でも印象に残っている。イベント自体を聞いた感想としては、やっぱり政治哲学よりカナ、という感じで良くも悪くも社会学側の自分との差異が気になった。しかし本書の射程を鑑みるとなるほどこちら側のチンケさが目立ってしまうほど、緻密なテクスト解釈と渉猟、コンテクストの復元とマルクスの地平の開闢に恐れ入った。ルカーチから始まる西欧マルクス主義に大きく傾いてたアルチュセールやカルスタが豪快に焼却され尽くしているようだ。2020/04/19
amanon
7
先に読んだ『人新世〜』のほぼ延長線上にある内容だが、かなりの難易度。とりわけ、マルクスの引用文の文体が晦渋で、この辺りは、やや読み飛ばした感があり。それでも、残念ながら未完に終わった『資本論』にどれだけの可能性が秘められていたかということは理解できた気がする。何より驚きだったのは、今日問題となっている環境破壊が、マルクスの時代から既に一部で取り沙汰にされていたという事実。そして、それにも関わらず資本の論理を優先させてきたため、事態はますますのっぴきならないものとなっている…この性懲りのなさは何なのか？2022/06/02
