出版社内容情報
賢治には、恋人がいたーー！ 知られざるラブ・ストーリーを作品と証言から大胆に読み解く、異色の文芸エッセイ。生涯独身で、その恋心は妹や親友に向けられたと解釈されることの多い聖人・宮澤賢治。しかし彼には相思相愛の女性がいました。
お互い結婚を考えながらも叶うことのなかった悲しい恋。本書はその顛末を、『春と修羅』をはじめとする詩の数々に封じこめられた切実な恋心を読み解きながら、明らかにしていきます。
誰もが知る詩「永訣の朝」や童話「やまなし」「銀河鉄道の夜」などに隠された苦しい恋の片鱗に気づくとき、これまでとは違う「人間・宮澤賢治」が、生き生きと立ち現れてきます。
岩手の自然と風土を知り尽くすエッセイストが、約100年の時を越えて開封する、胸がしめつけられるほど切なく美しい、愛の物語です。
プロローグ
第1章 一夜の旅
第2章 麗しき農学校時代
第3章 詩にこめた恋心
第4章 恋人・大畠ヤス
第5章 揺れる想い
第6章 阻まれた恋
第7章 嫁ぎゆくヤスへ
第8章 辛酸の春三部作
エピローグ
あとがき
宮澤賢治 略年譜
参考引用文献
澤口たまみ［サワグチタマミ］
著・文・その他
横山雄［ヨコヤマユウ］
イラスト
1 ～ 1件／全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Bridge
5
本の｢つくり｣に、密かな恋愛話をそっと打ち明けられたような気になりました。奥付の次のページにその秘密が・・・。澤口たまみさんの推理は、現代に生きるご親族のお話に裏打ちされているとはいえ冴えに冴えています。宮澤賢治ってこんな面もあんな面もあったんだっ、と驚きました。彼の意外な人柄に触れて、今まで以上に宮澤賢治という人の作品に触れていたい欲が高まります。2020/03/04
マーブル
5
賢治には相思相愛の恋人がいた。 実らぬ恋に一生独身で通すことになったが、普通の男として恋をしていた。 事情があって大っぴらにはできない想いを、作品のあちこちに散りばめている。 書かれている主旨を簡単に書けば上の通りだが、その記述は地中から鉱石を掘り起こす学術作業かミステリのようでもあり、恋人との逢瀬を描いて見せる場面はラブストーリーのようでもある。 澤口氏の広い才能に驚いた。あるいは賢治への強い想いのなせる業か。2018/10/16
horuso
3
「宮沢賢治の食卓」というドラマで大畠ヤスいう恋人が描かれていて、完全なフィクションなのかなと思って調べてみると、どうもかなり有力とされている説らしい。不勉強にして知らなかったが、周りの人々が隠蔽しようとしてきたのなら頷ける。ただ、本書は論文ではなくエッセイであり、事実と想像がごちゃまぜになっており、裏付け調査もいい加減なので何が本当のことかを納得しにくい。実際、花巻市博物館研究紀要第14号の論文とは、ヤスの死因、夫の名前や職業、渡航時の様子も異なる。そうなってくると全体の信憑性も残念ながら揺らいでしまう。2020/02/29
墨玉
1
実在の人物について遺族が存命のうちに書けること、書けないこと、解釈の違いなどあるけれど、情熱的に美しい一冊です。2018/11/06
ネルシュン
0
本当にあったであろう宮澤賢治の悲恋の物語、賢治の人間臭さがとても良い。2018/07/16
