感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
101
表紙に惹かれたバンド・デシネ。100頁を越えるカラーのグラフィック・ノベルを一気に読み終えた後、しばらくその空気から離れられず緩く浸っていた。薄明りのバー、ハシシの煙、無言で音楽(レベティコはギリシャのブルースなのだそうだ)に聴き入る者、緩やかに踊る男、喧嘩をおっぱじめる奴、冥府の5人のギリシャ人をリクエストするおっさん、夜の闇が現実の辛苦を包み隠す中で、誰もが歌とブズーキ(弦楽器)が奏でる叙情に酔い痴れる。彼らと彼女が紡いだ音はその一瞬の風。それはやがて消える。でも録音ではない実体のある自由な風なのだ。2023/07/06
アキ
75
1936年10月アテネ。独裁者メタクサスが政権を握り、トルコから数多くの移民が押し寄せ、監獄、水タバコ、ハシシ窟、暴力が蔓延る港町のある一日。20年代に生まれたレベティコは、ギリシャのブルースと呼ばれる。どうしようもない社会で生きることから生まれる詩とブズーキの調べ、女の歌声と催眠術にかかったかのような踊り。実在したレジェンドのマルコス・ヴァムヴァカリスをモチーフにその当時のヒリヒリとした、そしてどこかのどかな空気を味わえるバンド・デ・シネ。クラウドファウンディングでサウザンブックス社から出版された。2021/06/27
吉田あや
67
1936年、アテネの独裁者メタクサスによりファシズムへの道を走り出そうとしていた時代。生まれ故郷を離れ、流謫の身でギリシャのブルースと呼ばれたレベティコを奏でるレベテースたちは、ならず者と烙印を押されながらも、下層階級の人たちの倦んだ日々を音楽により吐き出し、笑い飛ばすように昇華させていく。当時の人たちと共に弾む音に体を任せ、ゆっくりと回転するように踊りながら陰鬱とした世情を忘れ、彼らの奏でる音楽に酩酊するような心地よい揺らぎを覚える。(⇒)2020/08/29
しゅん
19
かっちょえー。ファシズム近づく1936年のアテネで、音楽とともに街を行く不良たちの一日。乾いた空気の表現が良すぎる。話として、重いような軽いような、いろいろ起きているけどただの一日で、何度も読みたくなる。レベティコを聴きながら読んでいたら気持ちよかった。短調がだけど湿気を持たない感じにあふれる音楽で、その空気と本書の絵は調子よく動き出していく。2022/07/22
こうすけ
12
クラウドファンディングに参加して一足先に読了。移民として、社会の周縁に生きる者たちが、音楽を奏でつつ、どうしようもない底辺のような生活のなかで、くだを巻きながら過ごす1日の物語。音楽が彩る、夜の灯りに照らされたギリシャの酒場の情景にあこがれる。ジムジャームッシュの映画のように、ゆるくまったりとした雰囲気が良い。また、何より表紙が格好いい。2020/08/26
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