内容説明
『農業時の栞』は、三河国平坦地の環境に適応する木綿の耕作法を、宮崎安貞が著作した『農業全書』と対比する方法で記述した農書です。本書では『農業時の栞』の、進んでも遅れてもいない中進地の農耕技術と、どのような天候の年でも一定量の農作物を収穫するための技術を記述しました。前者は三河国の農耕技術の地域性を明らかにできるデータ、後者は天明年間の不順な天候に適応しつつ、一定量の農作物を収穫する技術の内容がわかるデータです。
目次
1 近世三河の農書類と農耕技術の水準(農書について;三河の農書と営農記録;三河国平坦地の農耕技術の水準)
2 『百姓伝記』が記述する農家屋敷内の諸施設の望ましい配置
3 冷涼気象に適応する『農業時の栞』の農耕技術(地域に根ざした農書『農業時の栞』;諸本と著者と赤坂宿;冷涼気象下で適度な量の農作物を収穫する技術;読者を引き込むための工夫;『農業時の栞』の農耕技術は三河国の農書へ継承された)
4 『農業時の栞』の木綿作技術の地域性(『農業時の栞』が説く木綿の耕作法;『農業時の栞』の木綿作技術の地域性;地域ごとに異なる農耕技術の発展系列)
5 『農業日用集』に見る東三河平坦地の農耕技術(『農業日用集』は地域に根ざした農書;『農業日用集』の木綿耕作法;他地域の農書の木綿工作法との比較;東三河平坦地における木綿の作付地;東三河平坦地における木綿の作付面積比と単位面積当り収量;明らかになったこと)
著者等紹介
有薗正一郎[アリゾノショウイチロウ]
1948年鹿児島市生まれ。1976年立命館大学大学院文学研究科博士課程を単位修得により退学。1989年文学博士(立命館大学)。現在、愛知大学名誉教授。研究分野=地理学。農書類が記述する近世の農耕技術を指標にして、地域の性格を明らかにする作業を半世紀近くおこなってきた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。