内容説明
毛沢東主義の危機意識の構造を軸に、中華人民共和国の誕生から文化大革命、そして改革開放政策までの歴史を、東アジア冷戦史のなかでとらえ直す。
目次
第1章 中華人民共和国成立の歴史的背景
第2章 急激な社会主義体制化と指導部の対外危機意識
第3章 「戒めの鑑」としてのソ連と独自の社会主義建設
第4章 廬山会議と認識の大転換
第5章 調整政策と社会主義教育運動
第6章 激動の一九六四年―文化大革命への傾斜
第7章 文化大革命
著者等紹介
奥村哲[オクムラサトシ]
1949年生まれ。京都大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。現在、首都大学東京(現、東京都立大学)名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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BLACK無糖好き
19
冷戦時の国際情勢と、中国が文化大革命へ至る関連を示す。アメリカのダレス国務長官の「平和的変質戦略」でソ連が修正主義に変質し、中ソ関係の悪化にも繋がったと捉え、内部の敵の勢力に対する警戒を高めた。アメリカの北ベトナへの攻撃に対し、ベトナム援助に消極的なソ連。これらもアメリカの平和的変質策の効果を感じる要因となったという。ソ連と通じた中国国内の修正主義の蔓延を一掃するための文化大革命が必要だと毛沢東は判断した。薄一波の回想録に多くを依拠。朱建栄教授のベトナム戦争と中国外交に関する著作も興味深い。2021/10/19
無重力蜜柑
7
面白かった。日中戦争から文化大革命へ至る道を「後進地域が超大国相手に総力戦を遂行するための超・超国家主義としてのマルクス・レーニン主義」という視座から描く。アジア・アフリカに広まったレーニン以後の共産主義は民族独立の理論的武器であり、対帝国主義戦争に備える体制構築のレトリックとしてのマルクス主義というのが大変興味深い。ソ連にしろ中国にしろ北朝鮮にしろ、総力戦が間近にあると感じられた時代にヒト・モノ・カネを動員するため作られた体制であり、どれほど内政がカスでも外交的失点がなければ指導者は失脚しないそう。2022/01/17