内容説明
第一次大戦後、ロシア革命のインパクトとコミンテルンの働きかけのもと、東アジアの各地には共産党が成立した。現に存在するのとは異なる世界を夢見た東アジアのコミュニストたちの運命は、複雑に交錯したあと、50年代半ば以後には一国的に分岐していく。彼方に東アジアの変革を見据えつつ日本の変革に身を投じた日本のコミュニストたちは、戦争と革命の20世紀をいかに生きたか。有名無名の活動家たちの営みを丹念にたどりなおすことにより、革命の夢が潰えたのちもなお色褪せない彼らの“生きられた経験”の意味を問う。
目次
はじめに―“帝国に抗する社会運動”のその後へ
「東洋の小さいインタナショナル」を目指して
国際共産主義運動と「日本の運命」
中国国民革命下の上海‐東京
「国際共産党日本支部日本共産党」の誕生
「一国一党の原則」と外国人コミュニスト
「ソ連防衛」のために
弾圧と転向に抗して
戦前/戦中/戦後の連続と断絶
中国革命と「極東コミンフォルム」
朝鮮戦争下日本のコミュニスト
東アジア国際共産主義運動の「五五年体制」
著者等紹介
黒川伊織[クロカワイオリ]
1974年広島市生まれ。神戸大学大学院総合人間科学研究科博士後期課程修了。博士(学術)。現在、会社員。神戸大学大学院国際文化学研究科協力研究員、大阪産業労働資料館(エル・ライブラリー)特別研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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BLACK無糖好き
17
1920年代はじめから1970年前後までの日本のコミュニストの足跡を東アジアの同時代史と連関させ叙述する。コミンテルンの「一国一党の原則」を、国際共産主義運動の論理から民族の壁を乗り越えての革命運動を提起した原則として捉え、第一次日本共産党での日本人党員と外国人党員(朝鮮人党員)の協働の一端にも焦点を当てながら、ナショナルな歴史や党派性の議論とはまた違った歴史像を提示している。◇冒頭の中野重治の詩「雨の降る品川駅」の哀愁漂うトーンが効果的。季節柄、雨が降り続くこの時期に偶然マッチした。2021/07/05