内容説明
ベトナム戦争が激化し、高度成長まっただ中の1965年、ベ平連(ベトナムに平和を!市民連合)は登場した。それまでの社会運動とは違い、デモをしながら道行く人びとにカラフルなビラや花を配り、フォークソングを歌い、反戦スナック・喫茶店を開き、ユニークなミニコミを発行し、自由な発想で、「ふつうの市民」としてそれぞれの主体性を尊重しあい、各地で反戦の声を上げていった。彼ら/彼女らは多様な「身ぶり」を通して日常に新しい政治空間を創造していったのである。このような運動がなぜこの時代に登場し、全国に拡大していったのか。べ平連の思想と行動の意味を現代史のなかから明らかにする。
目次
プロローグ 青空の下で
第1章 ベ平連まで
第2章 ベ平連発足
第3章 「つなぎの運動」から「持続する運動」へ―初期ベ平連の運動
第4章 地域からのベ平連
第5章 脱走兵と七〇年安保
第6章 フォークソングとハンパク―対抗文化運動としてのベ平連
第7章 安保を過ぎて
エピローグ
著者等紹介
平井一臣[ヒライカズオミ]
1958年生まれ。九州大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学、博士(法学)。現在、鹿児島大学法文学部教員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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BLACK無糖好き
20
ベ平連(ベトナムに平和を!市民連合)の活動の軌跡。1965年に発足し1974年に解散。反戦平和運動に多くの知識人・文化人や活動家も加わり全国的に拡大していったようだ。フォークソングや反戦喫茶(スナック)など、文化的な運動の側面も著述されていて時代の空気感が伝わってくる。自分自身、当時まだ幼少期でほとんど記憶にはないが、時代背景には懐かしさを覚える。本書の中で、小田実と三島由紀夫を対比させて、大衆に訴えかける言葉について考察した箇所がある。政治的立場が全く異なる二人だけにここはとても印象に残った。2021/05/15
geoff
1
60年代の社会運動というと、どうしてもヘルメットやゲバ棒、火炎瓶、内ゲバなんかが頭に浮かぶ。そんな中で、自由でなんだか楽しそうなベ平連運動は、20代の私には魅力的に映る。個人が組織の中に埋没していた教条主義的左翼の団体には、結局戦前から続く集団主義の悪癖がこびりついていたように見える。しかし、ベ平連は「左翼・共産主義」というよりもリベラリストの運動という感じがする。共産主義が「敗北」を迎えたと言われる今でも、個人を尊重するベ平連の運動原理は魅力を失わない。2021/08/10