内容説明
人生に絶望し、自ら墓に入った男。身体も心も自由になったが、男の姿は誰にも見えず、話すことすらできない。そんな男がある日、ひとりの少年と出会い、風の匂いやあたたかさ、人との触れ合いに心が動いた日々を思い出してゆく…。
著者等紹介
サトウヒロシ[サトウヒロシ]
絵本作家・万年筆画家。1978年福島に生まれ京都で育つ。神戸大学卒業。フリーランスのイラストレーターとして活動後、ウェブ制作会社・医学書専門出版社に勤務。2015年に独立、ソルティフロッグデザインスタジオを創業し、絵本作家・万年筆画家・デザイナーに(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
☆よいこ
71
分類726。大人絵本。男はつくづく自分が嫌いになったので、自ら墓に入った▽自分を埋めた男は肉体から自由になり、世界中を歩き回った。時間はまたたくまに過ぎ去り、男は世界を映画のように眺めていた。ある時、ひとりの少年が男を見つけ笑いかけてくれた。男は少年のそばにいることにしたが、少年の一生は短く消えていった。残された男は初めて自分の墓に戻る「返してくれ」男は叫び泣く▽巻末に制作に使用した万年筆インクと原画ペーパーが記載されている。2019年刊。世界が嫌いじゃなくて自分が嫌いなところが男の愚かさを示しているよう2024/10/31
ひらちゃん
57
自ら墓の中に入る事を望み、自由を手に入れたと喜んでいた男。悲しみを知り、本当の自分を取り戻したくなってももう遅い。絵本とはいえ、沈痛な表情で訴える様はゾッとするほどの画筆。子供では泣いてしまうかも。万年筆とインクで描かれた絵本は珍しい。2020/01/09
たまきら
38
読み友さんの感想を読んで。なんと寂しい人生だろうか…。でもある意味無欲の人ってこういうことなんだよなあ…悲しい最期だけれど、子どもや伴侶、国まで捨てて「悟り」を得る人とそこまで違わない気もします。生きることは選択の連鎖…死んだらどうなるかはわからないけれど。「あの世は居心地がいいに決まってるよ、戻って来た奴がいないんだもの」…昔落語で聞いたのがホントだと思いたいな。 2025/02/17
かおりんご
21
絵本。大人向けかな。死ぬことについて描かれているけれど、ある程度の年にならないと後悔先に立たずといのが分からないと思う。今、人生についてどんなに無味乾燥に感じていたとしても、長い目で見たら生きるのは素晴らしいというメッセージか?万年筆だけで描かれている絵本は、初めてかも。2020/01/05
Cinejazz
10
〝男はつくづく自分が嫌になったので、自ら墓に入った。 男は身体を捨て、新しい人生をはじめた・・・〟 「これからは自由だ!」 暑くも寒くもない、疲れもしない、眠くもならない。誰とも何事とも関わらず、ただただ彷徨い続けるだけ・・・やがて男は、風を、香りを、温もりを、傷みを、悲しみを、孤独を、人を、喜びを、関わりを「返してくれ!」と叫び、自分の墓に戻ってきたのですが・・・。 人の生と死の狭間をみつめ、自死を戒めた大人のための創作絵本です。<千の風になって>の歌詞が、頭の中を吹き抜けていきました。2022/03/18
-
- 電子書籍
- 花篝 御探し物請負屋 講談社文庫