内容説明
いよいよ決行のときが来た。貯水池に着くと、アルフレッドはノアと一緒にためらうことなく囚人服を脱ぎ、ドボンと水に飛び込んだ。ああ神様、なんて素晴らしいんだろう…。僕たちはまだ人間なんだ、と自分に言い聞かせる。「ノア、僕たちはこうして泳ぐことで、まだちゃんと感情がある人間なんだということを証明した。単なる番号ではないんだ」その夜、収容者たちはこのとんでもない冒険についての詳細を聞きたがった。まるで脱走劇を聞くような気持ちになっただろう。もしくは、世界の果てへの冒険旅行だ。
著者等紹介
ルブロン,ルノー[ルブロン,ルノー] [Leblond,Renaud]
フランス、パリ生まれ。編集者、作家、ジャン=リュック・ラガルデール財団理事、『レクスプレス』誌元記者。本書で、優れたスポーツ文学作品に贈られる“スポーツ・スクリプトム賞”を受賞。大のスポーツ好きで、2012年には、自ら“ジュール・リメ・スポーツ文学賞”を創設している
吉野さやか[ヨシノサヤカ]
フランス語翻訳者。明の星女子短期大学仏語科卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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つちのこ
41
ナチス占領下のフランスで活躍した水泳選手アルフレッド・ナカシュの激動の人生は、本書がなければ知る由もなかった。ホロコーストの犠牲者としてスポーツ選手を取り上げた例が少ないだけに貴重なノンフィクションである。反ユダヤ政策によりフランス選手権大会の不参加を余儀なくされたナカシュに対して、所属チームの選手たちが大会を棄権する行動に出たことは、強硬なナチス政策への抵抗と人種、偏見を越えたスポーツの絆を感じる。一方でそれを赦さないナチスのファシズムにはスポーツ本来の精神は存在しない。孤立を深める今のロシアにも⇒2023/12/24
おっぷう
1
アウシュビッツ強制収容所を生き抜いたアルジェリア系フランス人アルフレッド、カナッシュの伝記物語。スポーツ界にも反ユダヤ主義が浸透していった模様が描かれている。その理不尽な扱いに抗い記録を出し、人々に勇気を与えたカナッシュ。他者を思いやる人でもあった。2024/01/28
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