内容説明
アウシュヴィッツ強制収容所の実態に郵便学の手法でアプローチした独創的研究!新資料、新事実を大幅増補!知られざる都市の歴史と収容所の実態を明らかにする。
目次
はじめに 郵便学で“アウシュヴィッツ”を語るということ
1 “アウシュヴィッツ”以前
2 強制収容所
3 アウシュヴィッツの手紙
4 モノヴィッツとIGファルベンの郵便
5 アウシュヴィッツの戦後史
著者等紹介
内藤陽介[ナイトウヨウスケ]
1967年東京都生まれ。東京大学文学部卒業。郵便学者。日本文芸家協会会員。切手等の郵便資料から国家や地域のあり方を読み解く「郵便学」を提唱し、研究・著作活動を続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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南北
44
『歴史修正主義』を読んだときにホロコーストの話が強調されすぎているような気がしたので、その背景となるユダヤ人差別に関してもう少し知りたいと思って読んでみた。本書は郵便学から見たアウシュビッツについて書かれていて、現在はポーランドのオフィシエンチムとなっているアウシュビッツの歴史的な経緯とアウシュビッツから送られた手紙の消印や手紙の内容から当時の状況が見えてきた。そもそもポーランド人の捕虜・政治犯を対象に建設した収容所がやがてユダヤ人の強制収容所に変わっていくプロセスを知ることができたのは有益だった。2022/11/24
かおりんご
32
郵便学という分野を初めて知りました。葉書や封書に貼られている消印、切手などから、そのときの情勢を読み解く学問とのこと。私はいつも、封書をよく見ずに捨てていましたが、実は面白い情報が読み取れるかもしれないなと感じました。アウシュビッツと呼ばれた街を中心に淡々と書かれています。ユダヤ人迫害について、悪だ!と思っていましたが(無差別に殺害したのは悪だと今でも思っていますが)、その裏にある宗教や移民の問題を考えると、なんとも言えない気持ちになりました。今、もし、大量の難民が日本に来るとしたら、どうなんでしょ?2020/08/19
楽駿
32
品川図書館本。郵便学という分野があることを初めて知り、その奥深さに驚いた。ドイツと言うよりは、特にポーランドを中心にした第二次世界大戦前後の国の変遷を、実は詳しくは知らなかったのだ。1通の手紙から、その裏に隠された国の思惑、ナチスの思惑を読み解いていく。発売された切手にも、その思惑はついて回る。アウシュビッツが、人道的な施設だと思わせるために、使われた手紙のやり取り。国の不満をそらすために、発行された切手。この本は、できたらみんなに読んでいただきたい1冊。過去の戦争を知る事は、未来の戦争を避ける手段となる2020/03/06
アーク
8
会話だけで形の残らない電話と違って、手紙は後世に残るものもあるからこそ資料的な価値が高いことが分かる一冊。100万人以上の命が失われたというアウシュヴィッツ強制収容所でも、大きな制限がついていたものの、手紙や小包をやりとりできるほどのささやかな自由があったことは知らなかったな。この本、ホロコーストを批判している他の本とは違って、あくまで「手紙」に焦点を当てているので、封書や葉書のデザインや印刷されている文面、そしてそこでのやり取りから戦時中の緊張感が伝わってくるな。資料として高い価値のある一冊。2020/01/26