内容説明
映画「バルトの楽園」の題材となり、脚光を浴びた板東収容所に先行し、模範的な捕虜収容の礎を築いた丸亀収容所に光をあて、その全容を明らかにする。公的記録や新聞記事、日記などの豊富な資料を駆使し、当事者達の肉声から収容所の歴史や生活を再現。貴重な写真・図版66点収載。
目次
「大いに友好的に、同情を込めて歓迎します」―捕虜の到着
「美しい日本における無料の休養期間」―収容所生活
「彼らは退屈に苦しんでいる」―民間ドイツ人の慰問
「捕虜達を蹴ったり、殴ったり」―収容所からの密告
「忘恩は世の常」―メッケル将軍の縁者
「侮辱的取り扱い」―ランツェレ大尉事件
「人間社会から隔離されている」―捕虜将校の嘆き
「そこは異常な過密状態」―米国大使館員の来訪調査
「他の捕虜と折り合い悪しき者」―特殊捕虜
「大きな愚行」―捕虜の脱走
「我が国産業の発達・利益に資す」―捕虜の労働と技術指導
「参考となる物多し」―製作品展覧会
「気分は最低」―板東への移転
「遠処宿縁」―元捕虜の丸亀再訪
著者等紹介
高橋輝和[タカハシテルカズ]
1944年生まれ。岡山大学名誉教授、博士(文学)。ドイツ・ゲルマン言語文化論専門(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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スー
18
115第一次世界大戦のドイツ軍の捕虜収容所といえば板東が有名ですが、板東の成功のモデルとなったのがこの丸亀収容所でした。しかし、文化言語の違いと通訳の数と質で苦労し問題も発生しましたが体罰もなく捕虜と日本人との関係は概ね良好だったようです。ただ当初は半年くらいでドイツの勝利で終ると楽観視していたが長引くにつれ退屈が彼等を蝕み苛立ちを募らせていき丸亀の施設が小さい為に運動ができない事が問題になり、より大きな施設の板東を作るきっかけになりました。捕虜収容所の費用は現代の金額にすると5億を超え、この費用はドイツ2019/08/10
カステイラ
0
一般人にとってはちょっとしたお祭り騒ぎ感覚程度で見ていたかもしれないが、軍や政府にとってのドイツ兵捕虜は、変な扱いをしたら国際的立場が危うくなる厄介者であり、産業の発展に使えるかもしれない手段に見ていたことが分かった。徹底監視の理由に逃亡防止は勿論あるけど、のびのびしている捕虜なんて日本人には絶対見せたくないという思いもあったからだろうなと思った。2015/07/13