内容説明
五年二組、道徳の時間。男子が熱中しているとある遊びの犯人捜しが行われている。それは四年生の頃とは何かが変わってきた、禁じられた遊びだった。女子児童への昂り、抑圧された感情、嫉妬、真犯人…。生徒たちそれぞれの思惑が交差するなか、これじゃまるで動物のようだわ、と冷めた目で生徒を見つめる女教師もまた、隠れた欲望を抱いていて―。『道徳の時間』ほか、孤高の園児のハードボイルドな幼稚園生活を描く『園児の血』の二篇を収録!
著者等紹介
前田司郎[マエダシロウ]
1977年、東京生まれ。劇作家、演出家、俳優、小説家。劇団「五反田団」主宰。1997年、劇団「五反田団」を旗揚げ。04年『家が遠い』で京都芸術センター舞台芸術賞受賞。05年『愛でもない青春でもない旅立たない』(講談社)で小説家としてデビュー。07年、小説『グレート生活アドベンチャー』(新潮社)が芥川賞候補となる。08年、戯曲『生きてるものはいないのか』で第52回岸田國士戯曲賞受賞。09年、小説『夏の水の半魚人』(扶桑社/文庫・新潮社)で第22回三島由紀夫賞受賞。15年『徒歩7分』で第33回向田邦子賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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散文の詞
134
-道徳の時間- 道徳の時間の中で、「カンチョー」問題がどういう結論になるのか興味がだんだん湧いてきたのに、こんな終わり方ってあり? 自分に当てはめても、そういう事はいっぱい有ったような気がするし、確かにそれぞれがどいう結論だったか、おぼえてないかも。 -園児の血- 面白いです。4才児がまるで、任侠の世界のような会話をする。 これだけでも面白いだが、いちいち任侠の世界のような出来事が園児たちの間で起こるもの面白い。ただ、これっと言った事件や出来事もなく、淡々と物語がすすんで終わるのは、もったいないですね。 2021/04/22
モルク
98
「道徳の時間」小学4年生の時クラスで「カンチョー」が流行るが男子の間で攻撃というよりは友情が感じられるものだった。注意され1ヶ月でおさまったものの5年生になり再び…ターゲットは美少女の洋子。貧しくズボンの買えない洋子のスカートの中に手を入れてまでにエスカレートする。気になる女子にちょっかいを出したい気持ちと性的な芽生えが重なる。洋子が耐えることによって他の女子からも浮いてしまい…。胸くそ悪さが湧くが似たような構図は大人社会でもある。「園児の血」まだ幼児だからなんて思いは全く無い。どちらも映像化はあり得ない2021/01/31
モモ
54
『道徳の時間』嫌悪感と面白さが交互におとずれる複雑な読後感。小学5年生のクラスで男子たちが、綺麗な洋子にカンチョーする…先生にすごく怒られて終わりだと思うが、そうはならず。家が貧しくてスカートが買えない洋子は、そのことを打ち明けられず、スカートをはき続けることで女子からも見放されていく。嫌悪感と怒りがうずまく話。ただ、しれっと語られる真実の話は面白かったりする。『園児の血』幼稚園の年少さんの、おもちゃをめぐったりの戦いの日々。「三つ子の魂百まで」の言葉は本当だよなと思う。何とも言えない一冊。2020/12/27
そうたそ
43
★★★☆☆ 「道徳の時間」は◎、「園児の血」は△という感じ。ある小学五年のクラスで流行り出した浣腸遊び。男子の間で流行っていたものが、次第に標的が大人しい女子一人に限定されるようになり、やがて担任教師は騒動収束のため道徳の授業の議題として取り上げようとする(「道徳の時間」)。精神的に未発達な子どもたちの性衝動やその中でのクラスの在り方、そして妙な方向へと騒ぎを収束させてしまう教師等々、滑稽ながらも描き方はリアルである。今じゃこんなおおっぴらな浣腸騒ぎなんてないのかもしれないけれど。2016/09/27
じょんじょん
42
いやあ、すごい読後感悪いです。笑えるくらい。『道徳の時間』は、もはやいじめの世界ですよね。自分の小学生時代を振り返ると「浣腸」はなかったけど、スカートめくりなんてありましたね。でも、自分のクラスの女子はめちゃめちゃ強かったから、その報復のほうがすごかった(笑)子供のコントロールできない感情と行動の表現がすごいと思いますが、スカートの中に「浣腸」とか買えない服を含め逃げ場のない被害者が辛すぎます。『園児の血』のほうが笑えて読めました。しだいにやくざ映画風の言い回しにも慣れて、でも泣くんだ、みたいな。子供怖い2017/10/07